まなびと!

自らが学び続ける教師でありたい。振り返りの記録です。

[書評]「私学流 特別支援教育」私学の現状、教室支援とカウンセリングの取り組みがわかる!

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特別支援教育は公立学校に任せておけばいい」

「高校には特別支援教育が必要な生徒はいないはず」

公立学校では高校まで特別支援教育の必要性が浸透してきたようですが、私立学校はまだまだそこまでたどり着いていないようです。

2016年4月1日に障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が施行され、「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」が内容の中核となりました。

しかし、上記の項目については、国及び地方公共団体はその両方が法的義務とされるのに対し、事業者は前者のみが法的義務で後者は努力義務とされているのです。

>>障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 - 内閣府

この本では、私学の特別支援教育が進まない背景や、実際に特別支援教育を念頭に入れた学習指導や生徒指導を行っている具体例を示してくれています。

私立学校で特別支援教育が進まない背景

上記のように、私立学校では合理的配慮が努力義務であるため、特別支援教育がなかなか取り入れられていない現状があります。


例えば入試相談会の席上で発達障害のことを話題にした途端、学校が対応が冷たくなったりということがいまだにありますよね。

よく私学は、指導のきめ細やかさや面倒見のよさが売りであると言われています。

そのエビデンス特別支援教育においてはどこにあるのか」首を傾げざるを得ない状態もあります。

実際の数値で見てみると、私立中学高等学校においては

  • 特別支援教育コーディネーターの指名は4割前後
  • 個別の指導計画に至っては1割

という残念な結果に終わっているそうです

私も私立学校で勤めてきて、この本にあるように

「意識の壁として教科指導が教員の本分であり、特別支援教育は専門家のやることだと考える教員」

「経営的に見ても、特別支援教育については手間や人員がかかるため効率性の悪いものにはなかなか予算がつかない」

といった傾向があると感じています。

行政機関との繋がりに関しても、私立学校の場合は地域を超えて入学してくるために生徒の住まいによって連携機関を帰ることや小中との連携が難しいことなども挙げられました。

教室での特別支援教育

この本では、教室での特別支援教育の例がいくつか挙げられています。

  • 空気が読めない博士タイプ、指示が教員が言った通りに行動できない生徒
  • ユニークな生徒として受け止められている生徒
  • 落ち着きがない生徒
  • 中学受験をなんとか突破してきたにも関わらず、英語学習について困難が見られる生徒
  • 提出物を出さず、成績が振るわない生徒

など、いわゆる入試を突破してきた生徒ですら、入学後に困難を示すことが結構あるのだということがわかりました。

いわゆる偏差値帯が低い学校の支援教育だけではなく、偏差値が高い学校、ギフテッドの生徒が多く在籍すると思われるような学校の先生も執筆している点が個人的には興味深かったです。

カウンセリングルーム相談室の整備

私立学校でも株学校にスクールカウンセラーを配置したり、相談室を設置したりする動きが活発になってきています。

スクールカウンセラーは常駐していると生徒や保護者の面談もスムーズですし、担任が1人で生徒指導を抱える必要がなくなります。

また、スクールカウンセラーの呼びかけにより学年でのケース会議も開催できます。

相談室があれば、生徒は何か思わしくない行動があった時に個別に落ち着いて過ごすことができるようになります。

執筆者の勤務先で相談室が設置されている例をいくつか読むことができました。

現在、大学では国公立私立によらず、発達障害学生の支援の仕組みが急速に整えつつあります

全ての大学のうち、障害のある学生に対して授業支援をしているのが61.7%、授業以外の支援を実施しているのが52.9%にのぼり、私立高等学校の支援状況を上回っているそうです。

私も、発達に偏りのある生徒の大学進学指導に関しては、カウンセリングルームや学生相談室が充実している大学を勧めています。

まとめ

私立学校の売りとして、

「特進クラスを作りました」

「ICT活用に力を入れています」

「海外留学ができます」

といった点をアピールしますが、

特別支援教育に力を入れています」

というアピールをする学校は出てくるのでしょうか。

子育てをする保護者の視点から見ると、そういった私立学校がもっと多くでてきてほしいとは思います。

指導する側としてはもっと一クラスの人数を減らしたりチームティーチングが行われたりといった手厚さが環境への手厚さがもう少し欲しいところです。

この本の終章にあるように、近い将来

「私立学校でも特別支援教育が行われて当たり前、ウリとして伝えなくていい」

の状況になっているといいなと感じました。
私の周囲でも、特に博士タイプの男の子をもつご家庭では公立中学に進むと内申点がもらえない可能性があるため、試験だけで突破でき、同じようなタイプの仲間がいるだろうと中学受験をさせる予定という声をよく聞きます。

そのような生徒が集まるだろうと思われる、麻布や武蔵などの進学校の先生も執筆されていたことが意外な驚きでした。

私立学校の特別支援教育がより良い方向に進む道しるべになる1冊!

おすすめです。

ではまた☆