まなびと!

自らが学び続ける教師でありたい。振り返りの記録です。

[セミナー]世田谷区立桜丘中学校校長・西郷先生の講演メモ。すべての子どもたちが楽しい中学校とは?

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最近、世間を賑わせている東京の2つの中学校があります。

千代田区麹町中学校と、世田谷区立桜丘中学校。

今回、世田谷区立桜丘中学の校長である西郷先生の講演を伺う機会があったのでお邪魔してきました。

90分ほどお話を伺ったのですが、インターネットの記事ではまだまだわからないことがあるんだなと。

bunshun.jp

www.news-postseven.com

そりゃ、細切れの記事ですからね…。

「全ての子どもたちが、3年間を楽しく過ごせること」

を目指した教育とはどのようなものだったのか、よくわかりました。

もちろん、改革はすぐに進んだわけではありません。

取り組みながら振り返り、そこに問題は必ず起きてきます。

それでも、何もしないことが失敗なのではないかという想いを強くしてきました。

お話を伺いながらメモをしてきましたので、皆さんにシェアできたらと思います。

西郷先生のスタンスは、

「ワクワクすることは、受け入れる。学校はルーチンばかりで楽しくない。チャンスは逃さない。」

ことだそうです。

どんなことに取り組まれているかというと…

世田谷区立桜丘中学校の「お金がないあるある」対策…借りたり、もらったり、助成金に応募したり

公立中学校はお金がない。そこをどうするか。

桜丘中学では、swift3.0など、アプリが作れるソフトを入れたり、3Dプリンターを導入している。

しかし、公立学校はお金がないので、作っている企業に提携を持ちかけて、研究対象としてお願いする。

 

ペッパーもお借りしている。

Wi-Fiを入れるのも、お金がないので地域の人にお願いしていて、校内の配線は先生たちがつなげてくれた。

休み時間に生徒がゲームはじめてしまうと、とたんにネット回線が重くなる。

世田谷区立中学校の廊下活用法と、生徒の「やりたい」にどんどん応える

生徒のやりたいとはこんなこと。

ゲームクラブがあり、廊下で麻雀をやっている。

「家に麻雀牌があった」と生徒が持ってきた。

持ってきたということはやりたいということだよね?

4人集めて麻雀で遊んでみた。

週1くらいでギターを習える日がある。

生徒からポカリスエットのダンスをやりたいと言われて学校として協力、準優勝で5万円もらった。

バレー部の生徒が文化祭でバンドやったり、ギター弾いたりしている。

ゲリラ的に子ども食堂、夜の勉強教室も。同窓会、助成金など寄付を募っている。

孤食で過ごしている子もいるので、こういうところに来てもらう。

心配している子は来る。

学校ってつまんなくて、授業と部活くらいしかない。

「ここでは友達ができる」とかいろんなところで居場所ができる。

いまは、昭和のように「地域をフラフラしていれば友達ができる」とはならない。

3割の子は運動会好きじゃない。運動会好きな前提でやってるでしょう?

玉入れを導入してみたら、運動嫌いな子が朝練までやっていた。

「浴衣の日」は、浴衣で授業を受ける異空間を作る。

3年生になると、だいたい英語が喋れます。

知ってる単語だけでも相手と意思疎通をしようとする積極的な姿勢が出てくる。

桜丘中学では、「生徒総会で議決したことは必ず実現します」と約束

「生徒総会で議決したことは必ず実現します」と約束したため、生徒たちが500人の前で意見を言って喧々諤々する。

・体育館に冷房

・校庭を芝生に

定期テストをやめる

自動販売

この4つが最近決まったこと。

体育館に冷房は、世田谷区が導入する予定だったので早めに入れてもらえるよう頼んでいる。

校庭全てに芝生を植えようと思ったら、2ヶ月くらい芝生のために休ませる期間が必要。

運動部が困るということで、校庭の一角に芝生スペースができた。

自動販売機は、電気代どうするんだとか面倒くさいが、同窓会に頼んで入れてもらおうかなと思っている。

生徒は、大人が頑張っていることは認めてくれている(と思う)。

インクルーシブ教育の再定義

わかりやすい言葉で

「全ての子どもたちが、3年間を楽しく過ごせること」

幸せに生きる方法はなんだろうと考えること。

目の前の子どもたちの「観察」が大事。

理論先行ではなく、自然科学の方法を採っている。

目の前の子どもたちは自然だと思っている。

大好きな先生とお話できる「ゆうゆうタイム」

大好きな先生とお話できる時間として設定しているのが「ゆうゆうタイム」。

1年生が落ち着かなかったのですでにやっている。

選ばれない先生もいるて、多い先生は40人くらいの生徒とお話する。

おべっかを使う先生は見透かされる。

きちんと指導してくれる先生が人気がある、人間性を見抜く。

あやふやな先生に話しても仕方がない。

こういう職業を選んだ人は子どもが好きでなったので、本当の姿は管理する姿ではないと思っている。

10年前の桜丘中学校と、映画「みんなの学校」の衝撃

10年前の桜丘中学の生徒は、怒鳴らないと言う事聞かない、

「並べ、なにやってんだ!」

校長が話している間も話しているので先生が怒鳴っているような状態だった。

10年目で、少しずつ変えてきた。

中学生のルールを守る、反発するエネルギーをもっと別のことに使えないか。

頑張るところはそこではない。

校則を徐々に見直して、3つだけにした。礼儀、出会い、自分を大切に。

学力の向上も重要。

3年間楽しくても、勉強できないまま3年生になっても楽しくない。

そんなころ、渋谷のアップリンクで、「みんなの学校」を見てしまった。

minna-movie.jp

でも、この大空小には先がないんですよ。

「みんなの学校の小学生が通う中学校にしよう」

と火がついた。

そのほか、桜丘中学校の様子

授業中の居眠りを注意しない。

寝たほうがいい。20分くらい寝ると、頭が冴える、起こしてはいけない。

自分で時間を管理するために、ノーチャイムにしている。

聴覚過敏がある子もいる、ただ、発達障害の子はチャイムがあったほうがいい子もいる。

桜丘中学校の生徒は、高校に入って苦労している。チャイムや椅子で苦労。

苦しんでいる子は、我慢しないで、対応しましょうとしている。

椅子の下にはテニスボールを入れて、聴覚過敏の生徒に対応。

たった一人でもいたら、対応してあげる

環境のUDの推進は、教室全面の掲示物をはずしたくらいで…集中した。

全ての子どもたち一人ひとりに特別な配慮が必要だと考えている。 しかし、

「インクルーシブ教育をすると学力が落ちる、レベルを下げる」

と誤解された。

そんな声に対抗するため、GTEC、大学入試の英語をやっている。

会話を吹き込んで、ネイティブが採点してくれる、最先端の学習を導入した。

中学のタブレット使用が断られたといって転校してくるLDの生徒がいる。

みんなと同じように授業を受けるのは大変だな、東大に行って、こういう子がたくさんいるということを知った。

大変でいやだなぁと思わず、手間をかけてあげる。

この子が来たので、授業中のタブレット端末利用をだれでも使えるようにしたり、いろいろなことが楽になった。

他にも、

・英語教育

・プログラミング教育

・才能開発教育

に力を入れている。

どうやって才能を見つけ出して、活かしていくかやっている。

ロボットを使った英会話の授業をしていて、ロボットはHなことも喋るが、それだけ理解できるのは大したもので、帰国子女のような生徒しか理解できず笑っている。

英語を使う場所がないのでプログラミング習得しているし、英語で授業を行う料理教室もやっている。

そうすることで、英語でのコミュニケーションに抵抗を感じなくなる。

3Dプリンターをつかって両生類の心臓を作る授業は、成功例があるんだけどその前にたくさん失敗している。

FLL ファーストレゴリーグなども利用。レゴで、問題解決をする

アメリカに視察に行った際に、勉強ができる子を残してさらに数学を教えていて、そりゃ日本は負けると思った。

日本は、吹きこぼれた子どもたちを大切にしていないし、できない子をみんなと一緒にしないとダメだ、になっている。

最後に…桜丘中学校の「4つのOS」とは?

パソコンで言うところのOSは、様子が地域や学校で違うから、独自に作らなければならない。

CPUが違うのだから、生徒の様子を見ながらOSをつくるとやりやすい。

共通したOSとは?

1多様性の受容

きみはきみでいいんだよ、ということ。

2愛情を持って生徒に接する

愛情ってなんだという先生も増えているが、まずは一人の生徒に愛情をかけると全体に愛情を書けられるようになる。

3一人ひとりを大切にする

4子どもとともに生きる

一緒にいる、ではなく子どもと一緒に生きること。

テスト時の合理的配慮として、

・拡大用紙の利用

・ひらがな、カタカナでもテストの回答が可能。

・解答用紙をマス目に

・時間延長

タブレット端末やPCの利用、PDFの利用、読み上げ可能

みんなこれを利用していいよ、と伝えている。

デキる子は、別に10分延長も必要ないし、ひらがなで書くほうが大変。

今は、定期テストを廃止した。

20点を5回、毎日テストがあって毎日勉強しなければいけなくなった。

運動部の子は試合と期末テストがあたってしまうことが悩みだったが、解決した。

いまは分散しているから苦労しなくても良くなった。

Q&A

・出欠管理、廊下の生徒について

遅刻はとらない。どの授業に出たか、出ないか

学校の中にはいる、という管理は行っている。

1クラス40人、1学年190人中90人が越境してくる。

タブレットは把握していて、タブレットがないと勉強できないのは3人くらい。

不登校の生徒は、家でタブレット学習をすることで出席になるという法整備が整ったことで、遅刻はとらないというシステムが運用できるようになった。

・教員の労働時間について

中学教員の労働時間軽減は、部活をなくすしかない。

本当はさらに問題となって、世間にインパクトを与えないといけない。

現在の教育は教員の善意で支えられている。

目の前の子どもたちがいると残ってしまう。

総量規制で部活動は1週間に10時間まで、水曜と日曜は部活は禁止。

夏休みは2週間連続して休めと言っている。強制して来てはいけないと言っている。

・会議、校長の仕事について

会議で何かを決めるということはなく、やりたい人がやるシステム。

お金がないと言うと、どうやってお金と場所確保しようと校長が奔走する。

条件整備をするのが校長、人・モノ・金。

先生たちの希望も叶えてあげたいと思っている。

・人材育成について。異動の多い中学校でどのように今のような中学校にできたのか?

なるべく新規採用の人に来てもらっている。

新規採用は教えなければならないので敬遠されるが、教えるのが好きなので苦ではない。

教務主任は30歳、平均36歳。

公立の学校にずっといる必要はなく、スキルを身につける、価値を高めるためにいるんだ、となる。

将来は文科省に行きたいとか、民間に行きたいとか夢を持つようになる。

いま、保護者対応しながらこのスキルを身につけるというメタ認知をするようになる。

まとめ

公立中学校でもこれだけできるんだ〜〜〜って目からウロコの講演でした。

世田谷区立桜丘中学の校長も10年目ということで、今年でご退任なのだそうです。

みんなの学校は、木村校長先生が退任されたあとも「みんなの学校」として続くよう残られた先生が頑張っているようですが…。

お話を伺って考えたのは、

「自分の頭で考えられる」生徒を育てるために頑張っておられるんだなということ。

長期的に見ると、自主的に動ける人間と、言われたことをやるだけの人間になるのとどっちがいい?って話です。

諸外国に比べて自分の意見がなかったり、年齢に対して幼かったりするのは、日本の管理的な、押さえつける教育が原因の一端を担っているのでは…。

さらに印象的だったのはインクルーシブ教育。

他の中学校で、学習障害の生徒がタブレット端末の使用を断られたりするのが今の日本なんだなってガッカリしてしまいました。

目が悪いからメガネかけるのと同じだと思うんだけどなぁ…。

全員が使っていいよ、となったら障害の有無(親が気がついているかどうか)関係なく使えるようになるわけで、それこそがインクルーシブ教育じゃないんですかね。

西郷先生は、10年ほど特別支援教育に携わっていた時期もあるということで、障害のある生徒に対してどのような手を差し伸べることができるのか、よく考えられているのが素晴らしいと感じました。

なんとかしたいと思っても諦めちゃうから…(私も、諦めがち)。

子どもたちのために立ち上がって、ここまでの中学校になるなんて。

もちろん、何でも素晴らしいということはなくて、現在進行形で問題はあると思いますが、それでも管理でガチガチ、みんな同じスタンダードよりはいくらかマシなのではないかな?

募集が関わってくる私立では、なかなかここまで振り切ることは難しいかもしれませんが…その学校なりのOSについて考えてみたくなりました。

ではまた✩