[セミナー]成年年齢引き下げの影響は消費者教育にも?!「暮らしとリスク管理」参加レポート
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7月末に参加した、「暮らしとリスク管理」セミナーのレポートです。
家庭科教員向け。
2022年に成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることで、家庭科の消費者教育にも影響が及んできます。
2004年4月2日以降生まれの子どもは、2022年の18歳の誕生日に成人になります!
今までは、18歳から20歳までの間に未成年取消権があり、消費者として守られてきた部分があるのですが…成年年齢引き下げによって、18歳から契約したときに取り消すことが難しくなるようです。
100人以上の先生方が参加されていたように思います。
全体では、以下のような流れでした。
簡単にご紹介します。
基調講演「成年年齢引き下げとどのように向き合うか?─中高生に求められる消費者としての資質・能力─」
公益財団法人 消費者教育支援センター 柿野 成美 氏
成年年齢引き下げとどのように向き合うか?中高生に求められる消費者としての資質・能力についての発表でした。
小学校の教科書にも、契約の売買が教科書の項目に入ってくる!驚きですね。
スペインへ消費者教育の視察に行ったときに見たもので、高校生が「哲学」の授業のあとに受けて作ったイラスト。
高校生は、見る人に何を伝えようとしたのか?
操られている女の子に紐がついている、手にはクレジットカード。
「広告によって動いている」 「自分で選んでいるようで、実際は自由ではない」 というイメージ。
マーケティング、流行、ステータス、社会的な圧力、広告によって、私達の購買欲はコントロールされている。
女子高生がお店の行列を見て、タピオカミルクティーを飲みたくなるように。
現代は、インターネット利用の拡大により、見えない「お金」の広がり、キャッシュレス社会になっている。
世界的にな問題としては、地球温暖化による異常気象、気候変動、貧困の格差拡大などがある。
今は、キャッシュレスで、お金の管理ができるのがとても便利。
管理をしようと思ったら、記録が手元に残るので歓迎すべき側面もある。
消費者の自立を支援していくにあたって、H24に作られた消費者教育の法律がある。
「被害に合わない消費者を目指しましょう、こんな悪質商法がありますよ」ではダメ。
そして、140年ぶりに、成年年齢を引き下げる民法改正が成立した。
18歳が成年年齢になったら可能な行為
- 親の同意がなくても契約できる
- 携帯電話の契約
- ローンを組む
- クレジットカードをつくる
- 一人暮らしの部屋を借りる
- 10年有効のパスポートが取得できる
- 公認会計士、司法書士、医師免許、薬剤師免許など国家資格を取れる
- 結婚年齢が男女とも18歳になる。
- 性同一性障害の人が、性別の取扱いの変更審判を受けられる。
18歳が成年年齢になっても、できないこと
皆さんは、成年年齢の引き下げに賛成?反対?と質問がありました。
子どもたちの自立を考えると、毎日が投票、参院選の投票率が低いことも心配。
主権者教育とも絡めなければならず、それぞれが独立したものではない。
世界では、成年年齢はだいたい18歳。
でも、日本の子どもたちがあまり成熟しているとはいえない。(同感です)
参考になりそうな教材はコチラ。
民法改正による成年年齢の引き下げにより、未成年者取消権が消失してしまう。(ひえー!)
「契約時の年齢が18歳未満であること(今は20歳)」と2022年にはなってしまう!!
- 親権者が同意していないこと。
- お小遣いの範囲ではないこと(小遣いの目やすは1万円)
現在は未成年の相談件数と、20歳以上の相談件数が増えている。
未成年取り消しができないので事業者が狙ってくる可能性がある。
男性はアダルト、マルチ。女性はエステ、美容関係
契約金額は、年齢が上がるにつれて上昇している
もしあなたが消費者トラブルにあったら…おすすめのDVDが、
小学生の家庭科教科書に、消費生活、環境について書かれている。
高校生になってからの消費者教育は遅すぎる!
ぜひ、小学生から買い物や契約について学んでほしい。
子どもも、課金の問題など消費生活センターに相談できるようになることが大切。
消費者庁「社会への扉」をチェックしてみて!
>>社会への扉 ―12のクイズで学ぶ自立した消費者―(高校生(若年者)向け消費者教育教材 生徒用教材・教師用解説書) | 消費者庁
小学校の先生でも、一般の人と同じくらいしか解けない。
だまされやすさを測る心理傾向チェックをする!
消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析にかかる検討会報告書」も読んでみてほしい。
相談被害は、ネットで共有されているので、訴えていくことができる。
社会を変える大きな力になっていく。
生命保険文化センター・日本損害保険協会による教材紹介
今回主催してくださった団体による教材紹介がありました。
「君とみらいとライフプラン」は無料配布で、勤務先でも使っています。
ライフプラン年表も、生徒は割と楽しんで作っていました。
リスク管理まで生徒は頭がまわるかしら…最近は、若い人が起こした自転車事故での損害賠償がよくニュースになりますね。
授業実践報告
昼食のあと、授業の実践報告を伺いました。
家庭科授業実践報告 「生活設計やリスク管理に関する授業実践報告」
東京大学教育学部附属中等教育学校 楢府 暢子 先生
テストに出しやすいから、教科書にあるから、という授業づくりではダメ。
「ライフプランを考える授業」で、年表を埋めさせるだけだけでよいのか?
実際に、受講者でライフプランを考えてみましたが…なかなか思いつかないものです。
逆に、過去に自分に影響を与えたことを書いてみると、割と参加年齢が高いので「結婚、出産」などがすらすら出てきます。
40代の私でもライフプランを考えるのが難しいのに、生徒はもっと大変ですよね。
過去のことを振り返って話すのは結構ありかも?とは思いました。
生徒は完全に夢だと思って書いてくるか、書けなくなってしまうか、2つに分かれるのに納得しました。
楢府先生は、保護者の方にインタビューする課題も出されているようでした。
公民科授業実践報告 「社会保障制度や民間保険に関する授業実践報告」
東京都立蒲田高等学校 浅川 貴広 先生
浅川先生の勤務先では特別支援教育が必要な生徒もいて、学びのユニバーサルデザインを意識してUDフォントを使われているそうです。
「最近話題になった2000万円の報告書は、2000万円足りないということばかりに触れているのではなく、高齢社会における資産形成が必要だ」ということが中心になっているので読んでみてください、と熱い想いをお持ちの浅川先生。
公民科で社会保障制度や民間保険制度を扱う過程での実践報告でした。
社会保障制度の意義や仕組みを理解した上で、社会保障人生ゲームを通じて、社会保険と民間保険の必要性を理解するという授業でした。
人生ゲームは、25歳から75歳までの6ターンでじゃんけんをすることでリスクに直面し、貯蓄が減ったり保障が手厚かったりするという誰でも実践できそうな内容です。
実際に、列ごとに分かれて
- 保険に入らないグループ
- 公的社会保険のみのグループ
- 公的、私的保険どちらも入っているグループ
でゲームを試してみると、保険に入らないグループは2,3回じゃんけんに負けるだけで収支がマイナスになってしまいました。
他にも、家庭科や情報科と教科間連携をしていて、消費者教育ウイークと名付けて集中的に授業を行っているそうです。
なかなかできないことなので、羨ましいですね!
セミナー参加した教員による、グループ別情報交換会
授業実践のあと、名札についている番号ごとにテーブルに集まって情報交換会を行いました。
普段、同じ教科で学校を超えた交流がなかなかできないので大変有意義な時間でした!!
私立、公立問わず高校の先生とお話して共通していたのは、
- 高校は家庭基礎が殆どで1年間に週2時間しかない。そのため消費者教育に充分な時間を割くことが難しい。←時間確保が本当に大変!年間70時間に衣食住、保育、高齢者、消費者教育、家族家庭…入らないよね?
- 講師派遣をしていただきたいが、全クラス集めて話を聞く時間が持てない→各クラスに派遣してもらうことも可能らしい…!実際に、6クラスに1時間ずつお邪魔して講演されたことがあるらしいです。
他にも、理系教育やICT教育に力を入れているのだけれども家庭科は蚊帳の外で調理室がない、などの悩みも聞かれました。
定時制の先生は、スマホをやめない生徒に注意したらキレられたり、おしゃべりをやめなかったり、コミュニケーションが苦手な子も多くてグループワークが成立しないなどの悩みを聞き、どこも同じなんだなとホッとしたりして…。(いや、ホッとしてる場合じゃない)
まとめ
以上、「暮らしとリスク管理」参加レポートでした。
「成年年齢引き下げとどのように向き合うか?」
という点についてはあと3年ほど猶予はありますが、今から
- いつから18歳成年になるのか
- 18歳成年年齢になってできること、できないことは何か
- 子どもたちを18歳までに大人にする(選挙に行こうと思えるくらい自分なりの考えを持つ、それらを表明できる、精神的自立ができる)ためにはどうしたらよいか
という点についてしっかり考えて置かなければという気持ちになりました。
教員同士の交流タイムもしっかり保証されていて、とても有意義なセミナーでした。
来年も参加しようかなと思いました。
今年は、定員に達してしまいお断りすることもあったそう。
ご興味のある方はぜひ参加してみてくださいね♪
ではまた✩