[書評]自殺願望、リストカットの支援はどうすれば?「一瞬で良い変化を起こす10秒・30秒・3分カウンセリング」
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「生徒に気の利いたことをすぐに言えないのが悩み。その場で対応するために良い本はないかな?」
生徒に予想もしていなかった一言を言われた時、どんな風に返していますか?
私はその場でタジタジしてしまい、瞬間的にフリーズしてしまうことがしばしば。
この本では、教室や廊下など、日常の様々な場面で10秒、30秒、3分という短い時間でできるカウンセリングを具体的な場面ごとに教えてくれます。
カウンセリングの考え方や理論に基づいた実践の中から、試行錯誤的に生まれてきた工夫です。
解決志向アプローチなどで重視されるリソースを活用することも心に留めておくべきでしょう。
日常で、チームではなくひとりでもできるカウンセリングとは?
例えば、自殺のほのめかしやリストカットへの支援など、こんな考え方を元に子ども達に声かけをすると良いのだと目からウロコでした。
この方法が唯一であるとか、こうすれば絶対に生徒に効くというわけではないので、ぜひ本を読みその根底にある考え方を知ってくださいね。
以下、いくつかのトピックについて
「なるほど!」
と思った声かけの方法や視点をご紹介します。
教師への暴言への対応方法
落ち着かない生徒は、教師に対して暴言をしてしまうことがあります。
機嫌が良かったり悪かったりと、教師側が振り回されることが多いものです。
もちろん指導する際も安心や安全の状態は変わりますが、
「もう1回言ってみて」
と穏やかに声をかけてみると良いでしょう。
こちらがスルーしてしまえば、相手が切れる可能性は低くなりますが、指導にはなりません。
もう一度言うように促すことで、その生徒には関わっていることを示すのです。
その声かけにスルーしていくようであれば、後でもう一度を声をかけても良いでしょう。
もし、また生徒が暴言を投げつけてくるようであれば感情を言語化させることをお勧めします。
働きかけに相手が答えたのであれば、こちらが主導権を持ち、相手に問いかけを重ねてある程度やり取りを続けていくと良いでしょう。
廊下でのイジメへの対応方法
男子生徒が廊下で、二人や三人でじゃれあってる姿を見かけるのはよくあることですね。
でもそれが冗談なのか、いじりやいじめなのか、という点ははっきりさせておいた方が良い場面なのかもしれません。
10秒カウンセリングでは、
「悪意があってやってるの?」
と働きかけています。
相手が
「悪意なんかなく遊びでした」
と答たら、
「悪意があってやってるのかと思った」
と投げかけておきます。
また30秒あれば、
「いじめですか?」
と穏やかに声をかけます。
相手が遊びだと言った場合には、
「遊びではなくいじめに見えるよ」
と指導していきます。
相手が、もし
「いじめです」
と言ってきたら、ふざけではなくいじめということですから指導していくということになります。
周囲から見たらいじめと見られても仕方がないような行為は控えるよう、生徒に促していきましょう。
自殺のほのめかしへの支援は?
日本国内の自殺は2010年頃から少しずつ減少し始め、2012年以降は3万人未満に推移しているそうです。
しかし、若者の自殺は高止まりが続いていると言われています。
子どもが死にたいと言ってきた時には、どのように対応すればよいか迷いますね。
TALKの原則に基づいて、
「あなたを心配している」
という言葉を伝え、絶望的な気持ちを傾聴していきます。
10秒カウンセリングでは、話してくれたことに感謝を伝えていきます。
また、もし30秒あれば、
「生きていてほしい」
と伝えるのです。
「死んではいけない。自殺してはだめだよ」
と言って自殺を食い止めたい気持ちはわかりますが、
「生きていて明日は話したい」
「生きていて明日も顔を見せてほしい」
という言葉を選び、率直に伝えて行きましょう。
3分あれば、さらに死んでしまうことでどんな利益があるか聞くのも一つの方法です。
死んでしまうことでの利益が生徒から出てくるのであれば、しなくてもそのようにできる方法を考えていきましょう。
リストカットへの支援は?
リストカットの気を引くためにやっていると思われがちです。
しかし大半は、軽率な行動ではないという調査結果もあります。
「やめなさい」よりも、「やめたい、止めたい」と言ってみましょう。
「先生も、その場にいたら止めたいよ」
と言うのです。
子どもを叱るのではなく、支援する側自身の心の動きを言葉として表現していきます。
またリストカットという行動によって、その不快な感情がすっきりするということがメリットとしてあるようです。
リストカットの経験について話した時に、不快な感情を言葉にしてもらうと大変な状況の時に感情を適切に処理できるようになることを狙います。
また3分あれば、誰かに助けてもらう姿勢を育てていきましょう。
孤独を背負い、家族や周囲に頼ったりすることができないためにリストカットしている可能性が高いです。
リストカットをして孤独に耐えるのではなく、人に頼ったり助けてもやっていけるように変わっていくようなスキルが必要と考えられます。
子どもが「言葉で感情を表せる」練習を積み重ねよう
このカウンセリングでは、子どもが自分の感情を言語化することに重きを置いています。
子どもが辛い状況に対して、自分で対処していけるよう支援することが大切です。
子どもたちが全く問題なく、学校生活を送ることは不可能です。
問題が問題になってしまうことが、その状況が問題なのです。
問題解決を通して、子どもたちが成長していけるような支援を目指していきましょう。
また、「共にいる」ことや、「共に思う」ことがカウンセリングの基本姿勢となります。
子どもの内面にある気持ちを、
「共に眺める」
ことが大切です。
実践活動の中で、子どもとの関係に苦労する場合にはこの「共に眺める」関係が保たれていない可能性が高いです。
感情が言葉とつながり、他者と共有できるというプロセスを経ることが大切です。
そして、「ネガティブな感情が他者と共有できていないこと」が、「その感情をコントロールできないこと」につながってしまっています。
この本の多くの事例では、子どもが自分の中に生じている不快な感情に振り回されていると考えられます。
なお、
「それはひどいね」
というのは感情の言語化ではありません。
子ども自身の中に生じるものなので主語は必ず子どもになります。
子どもが
「ムカつく」
という言葉は
「あいつはむかつく」「状況がむかつく」
ということを指しています。
「すごく腹が立つんだね」
などと言い換えることが必要です。
また、肯定的な働きかけをすることが必要です。
止めるように働きかけるのではなく、良い事を見つけて報告するように働きかけます 。
まとめ
教員自身も安心して学校生活を送るために、生徒との関わり方を工夫する必要性を感じました。
生徒とともに、問題について
「共に眺める」
関係を保つことを意識して過ごしていくだけでも、教員側の姿勢が変わってくるのではないでしょうか。
この本を参考にして、より丁寧に子どもたちにかかわれるようトライしてみます。
適切な生徒との関わり方を学びたい先生方、ぜひご一読を!
ではまた☆