[書評]教育困難校の取り組み「再チャレンジ高校」「新座高校の学び」2冊を読み比べ。
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「進路多様な学校の生徒たちの様子は?」
「生徒たちに有効な授業や接し方は?」
生徒たちに有効な授業や接し方については、私もいつも迷っています。
進路多様な高校の実践本として、以下の2冊を読みました。
どちらも2018年に発売された、新し目の本です。
もし、偏差値的に似たような学校に勤務しているのであれば、ぜひどちらも読んでみてほしいです。
県立! 再チャレンジ高校 生徒が人生をやり直せる学校 (講談社現代新書)
再チャレンジ高校として、小中学校でつらい思いをしてきた生徒を受け入れている槙尾高校の数年間の取り組みについて書かれています。
勤務校と生徒層が近く、読み進めるのが苦しい場面もありました。
槙尾高校と同じく、家庭の教育力がないばかりか毎日虐待など穏やかに暮らせない生徒も少なからずいます。
参考になる点も多くありましたが、一日の殆どを占める授業への取り組みは少なめ。
過酷な環境を生きている生徒への授業外の指導に多く紙面が割かれていて、やはり困難校では授業を中心に学校づくりをするのは難しいのかなと少しガッカリ。
「◯◯科の教員である」と紹介されていても、そのことが全く意味をなさない(笑)。
夜の荒川河川敷を走る、金八先生みたいな話がゴロゴロと…。
ルポルタージュとして書かれているので、センセーショナルな取り組みが取り上げられるのは仕方がない面もあるかもしれません。
インバイトというアルバイトがすらできない生徒のために地域の商工会に依頼し、生徒の育成をお願いするという高校でのインターン企画。
これもなかなか続けるのが難しいことです。
北関東に槙尾高校ではと思う学校があり、ホームページを調べてみました。
本では触れられていませんが、この取り組みは二年ででストップしています。
アルバイトすら受からない、社会性のない生徒を学校外で育てるのは本当に大変です。
私の勤務先でも農業体験などのプログラムを組んだことがありますが、生徒があまりにやんちゃすぎて、二泊三日のプログラム中に生徒指導が多発。
地域の農家の方からも受け入れを断られてしまったため、3年で頓挫してしまいました。
取り組みのために、ものすごい長時間労働をされているだろうと推測されます。
例えば、校長や教頭、ほかやる気があるとされる教員が学校を改革するためのの打ち合わせが飲み屋ですすめられていく。
お酒が飲めない、子育てで遅くまで残れない自分としては、飲み屋インフォーマルな結びつきがなされていくのはなかなか厳しいものがあります 。
読み物としては◎。
「協働の学び」が変えた学校 : 新座高校 学校改革の10年
進路多様な、全校集会で生徒が並ぶのに40分もかかるような学校だった新座高校で、授業を変えていこうと月に一度の授業研究会をすることになった経緯や分析が書かれている本。
授業研究会では、
「教師の授業のやり方云々」
ではなく、
「生徒がこの授業でどのように学んだか」
を授業後に交流していく。
何年か続けていくことで、退学者や保健室の来室人数が減っていく。
授業成立のための、生徒指導含めた改革の取り組みの全容をもう少し知りたかった。
例えば、授業規律をどのように考えているか。
また、頭髪や、風紀指導はどのような取り組みをしているかということについては触れられていませんでした。
後半、地域からの入学者の推移と考察は面白い。
新座高校でも、近所の地域から入ってくる中学生が増えると地域でも認められている証拠だと考えていること。
また、生徒の学力が応募倍率によってかなり異なること。
そのため倍率が高かった年の翌年は倍率が下がりまた揺り戻しがあるということが3年のスパンで起きている。
負担の少ない学年で過ごしたいと思ったら、倍率の高い学年を選ぶと良いかもしれません。
もちろん、本書ではそんなことは書かれていませんよ。
倍率が1倍を切る学年は、他の学年と比較すると指導に困難が伴うということについては激しく同意します。
職員会議で、
「授業研究会を行うことには意味がないのではないか」
と言う揺り戻しの提案があったことなど、どこの学校でも新しいことを続けていくのは本当に大変なことだと感じました。
同じく進路多様校を描いた「再チャレンジ高校」は授業のことはほとんど出てこなかったのと対象的な一冊でした。
まとめ
再チャレンジ高校はルポライターが書いた作品で、新座高校は教育などの雑誌に投稿している先生方がまとめて下さったもの。
どちらの学校についても、
「もう少しこの辺が知りたい!」
「実際に見てみたい!」
という気持ちが湧いてきました 。
現在、新しいカリキュラムを考える委員会に入っているため、是非とも参考にしたいという気持ちが強いです。
特に、学力困難校での授業改革は効果があるのかということが気になっています。
困難校では残念ながら毎回の授業が成立せずに苦痛となってしまうからです。
高校の教員の多くが、
「よりよい授業をしたい!」
と思って教員になったはずなのに…。
そのあたり、偏差値が低かったとしても専門高校だと専門科目が多いため目的意識もある程度見いだせるのです。
就職もほぼ100%ですしね。
全日制普通、総合高校では授業の内容はほぼ大学進学向けの内容であるため、理解できない生徒がどんどん落ちこぼれてしまうのは仕方のないことなのか?
どうすれば困難校で授業が成立するのか、生徒と教師も楽しく授業ができるのかをもう少し考えてみたいです。
どちらの学校にもつてがありそうなので、近いうちに見学に行ってみたいと思います。
ではまた☆