[書評]「居場所がない」「疲れた」と訴える子どもたち「日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか」
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職場で、よく子どもの自尊感情や、自己肯定感についての話題がよく出ます。
先生達の悩みは、「入った高校に誇りが持てない」ということ。
学力的に下のほうの公立を受けて落ちてくる生徒。
「こんなバカ学校」・・・日々耳にする言葉です。私たち教員の自尊感情も低くなりそう。
今後のカリキュラムなどを考える上でも、自尊感情はキーワードになってくるのかな・・・でも、そもそも学校で自尊感情を高めることはできるのか?
自尊感情を測定することは難しいのでは?
という疑問を持っていたところ、その答えになるような本にめぐり合いました。
「自尊感情」について理解が深まる本だと思いましたので、内容の一部を紹介します。
なるほど!メモ
- 著者・・・大学教授、児童精神科医。
自尊感情は、低くても高くても良くない
自尊感情とはなにか。自分の「肯定的な面」「否定的な面」を理解した上での「自分」を自分自身で考えるということ。
海外の研究では、低学力、少年犯罪、薬物依存、自殺などと自尊心の間に相関関係があることが指摘されている。
自尊感情に影響を与える要因としては、社会的階層、人種、宗教などよりも、両親との関係が大きい。
両親から関心を向けられ、良好なかかわりを持つことがそれを高めると一般的には報告されている。
特に幼児期との母親との関係が大きく影響を与えると言われている。
自尊心は高すぎても低すぎても良くない。
高すぎる場合、自信をずっと持ち続け、悪いことは他人のせいにし、自分の正しさを曲げない状態が続き、周囲が振り回されてしまう。
なんと!日本の子ども達の自尊感情は低い
ドイツで開発された調査を日本の同年齢の生徒に実施したところ、日本はどんな階層(経済的、学力的)の生徒も国際的な平均から低いことがわかった。
QOL(quality of life)調査として実施した。
項目:
小学校から、中学校、高校に向け、自尊感情がどんどん低くなる。
思春期に下がることはよくあるが、このテストは高校1年生の年齢対応。高校2,3年では実施していないので自尊感情が低いまま社会に出てしまっている可能性がある。
自尊感情が保てないまま、自分に自信を持てないまま親となり、子どもを育てることは容易なことではない。
自尊感情が高いオランダの教育と比較すると、オランダは個別教育を実施している。
日本の一斉授業は授業の進度が遅れがちな生徒にとって、取り残され感が強く、自尊感情を下げに学校に行っているようなものになっている。
親子で実施すると、親の方が子どもの自尊感情を高く見積もってしまっていることがほとんど。子どもの自尊感情を親でも把握することが難しい。
学校において、このような調査でスクリーニングをする事で、うつ傾向、自殺願望、発達障害、いじめの有無、虐待など、重要な問題の早期発見をする事ができる。
スクールカウンセラーや養護教諭の面接、医療機関、心理相談、児童相談所や警察などにつなげていくことができる。
実際にあった例:家族の調査点が0点の中学生の生徒→生徒への面接により小さい頃からの虐待が発覚→児童相談所に虐待の通告
まとめ
子どもの頃から、1つのものさしだけで同年齢のお友達と比較されて育ち、自分が優れているところはないと思いながら育ってしまう子ども達が日本には多そうです。
読んでみて、「うちの高校でもこの調査して欲しい!!!」と即連絡取りたくなったくらいでした。
勤務先でもスクールカウンセラーや各種関係機関と連絡を取っているのですが、基本的に事件が起こった後になり、どうしても後手にまわってしまうので・・・。
だいぶ前の本になりますが、まだ家に取ってあるくらい良い本なのでぜひ読んでみてくださいね。
ではまた☆