[書評]簡単で副作用が少ない!相手の力を信じる本「解決志向ブリーフセラピー」
「先生が簡単にできて、副作用のないカウンセリングってないのかな?」
麹町中学校の工藤先生の「学校の当たり前をやめた」という本で紹介されていた、
「<森・黒沢のワークショップで学ぶ>解決志向ブリーフセラピー」
が、問いへの一助になるかもしれません。
画像にあるように、200ページ弱の薄い本ですがたくさん付箋がついてしまいました。
ここ1ヶ月は夜の読書のお供として繰り返し読んでいます。
生徒と接するとき、また人生哲学としても面白い考え方だと思ったので皆さんにもご紹介します。
対話形式になっているのでとても読みやすいですよ。
解決志向の中心哲学、人生にも必要な考え方かも!
この本では、解決志向ブリーフセラピーの中心哲学の3つのルールがまず紹介されています。
「うまくいってるのなら、変えようとするな」
「もし1度やって、うまくいったのなら、またそれをせよ」
「もしうまくいっていないのであれば、(何でもいいから)違うことをやってみよ」
これらの原則に則って解決志向のアプローチをしていきます。
この哲学、人生にも応用できそうです。
うまく行っているのに変えてしまう時、ありますよね。
そして、一度やって成功しているのに継続していないことってあるある!
で、うまく行っていないのに毎回同じことを繰り返してしまうこと…あるわーーーー。
ってなりました。
生徒との接し方、一度試して上手く行かないなら「なんでもいいから」違うことをしてみるのです。
試してみて、失敗したらどうしようと思う気持ちが失敗なのかも。
このシンプルな問いだけでカウンセリングが成立するみたいです。
ここ2日位、クラスの生徒と面談したときにちゃんと、この3つの問いを駆使してみればよかった…。
使えそうなときがあれば、自然な形で取り入れてみたいですね。
解決志向に大切なものの見方「4つの発想の前提」
そして、さらに大切なものの見方として「4つの発想の前提」があります。
「変化は絶えず起こっており、そして必然である」
「小さな変化は、大きな変化を生み出す。」
「解決について知るほうが、問題と原因を把握するよりも有用である。」
「クライエントは、彼らの問題解決のためのリソースを持っている。クライエントが、(彼らの)解決のエキスパート(専門家)である。」
クライアントは悩んでいることの原因は何なのかということにフォーカスするのではなく、どうすれば解決できるかという具体例をクライアントと探ります。
もしもクライエントが抱えている原因が母親の子育てだったとしても、その原因を知ったところでどうすればいいのかと困ってしまうこともあるでしょう 。
そのため、このセラピーは問題解決ではなく解決思考という名前がついているのです 。
過去のトラウマに触れる必要がなく、クライアントは今にフォーカスしていきます。
そのため副作用も少なく、日常の会話の中でカウンセリングを進めることができるのです 。
クライエントの「リソース」をフル活用。
解決のための答えは、本人が持っているはず!と、クライエントを信じるのです。
6年間神経症で悩んでいた男性を、2回のカウンセリングで解決した例など、パワフルな方法だと感じました。
まとめ
印象的だったのは、ビジターとして訪れた生徒に深堀りして話をするのではなく、来たことを褒めたり、今やっていることについて承認していくことで自然と問題が解決することがあることです。
本当に小さな行動を何度も試していくことで、雪だるまのように行動が変わっていく例をいくつも読み、相手への声かけ一つで変わっていくことの重要性を感じました。
まさに、「言葉はウイルス」なんですね。
カウンセリング時のみならず、日常生活にも活かせそうな原則が他にも載っているのでぜひ読んでみることをおすすめします
ワークショップ形式なので語り口が軽く、本自体が薄いのでささっと読めます。
実際に生かすことができれば、人生が変わりそうな予感がします。
ではまた☆
[書評]この春必読の一冊!学習者中心の授業ができているか?「まんがで知る未来の学び」
熊本大学教職大学院の先生である前田康弘さんによる「まんがで知るシリーズ」の4作目です。
今回は教師だけでなく、「未来への学び」への模索。
本の帯にはこのように書かれています。
働き方も生き方も新たな局面を迎えたいま、学校と社会に必要なのはコミュニティーとしてのアップデートー受験と部活動に明け暮れる中学校と、時代に取り残される地域社会が向かうべき方向とは。
読者の幅を広げるために学校関係者以外の方にも、未来の学びはどうなるのかということを知っていただきたいとまえがきにもありました。
みんなで「これからの教育」について考えていくためのきっかけになるでしょう。
中学校教師の「働き方の悩み」から始まる!
今回の舞台は、前作の小学校から中学校に移っています。
女性の先生が、未経験の運動部を担当していてなかなか早く帰れず仕事も終わらず、帰宅が10時頃になり悩む場面から始まります。
もう一人の男性顧問は、妻のSOSメールに気がつかず帰宅が遅くなり、妻から
「いつ、自分の子どもを見るようになるのか」
と責められてしまいます。
他人事じゃないよね…。
「授業者中心」から「学習者中心」の学びに変えていくためにできること
今回の作品では、学校や地域に様々な学習者が登場します。
中学の先生方、教職大学院の学生さん、街づくりのために奔走する地元の商店街の店主や、地域の学びカフェに集まる3人の高齢者、中学2年生の子どもたちです。
それぞれが自らの学習スタイルに沿って学習している姿が描かれています。
教職大学院の生徒さんが学びカフェで高齢者の方にタブレットの利用法を教える場面が印象的でした。
大学の先生からのアドバイスは、
教える側の視点で立つのではなく、学習する側の視点に立つこと。
そのためのアドバイスが5つ用意されていました。
教える側は、教える内容のコンテンツに目が向いてしまいがちです。
しかし、学習する側がどのよう何ができるようになるのかという意識を持ちながら教えることが大切だということを改めて感じました。
今回の主人公である美術の先生は、授業を教えていく中で学習指導要領を読み込み、
「自分の授業は作品作り自体が学習の中心になっていて、作品をうまく作れない子供にとって面白くない授業だったのではないか」
と実践を振り返ります。
たまたまこののタイミングで学校の生徒全てにタブレットが配られたことも良いきっかけとなり
「学習者中心の授業ができないか」
と、先生自身もアップデートしていきます。
大学の先生からの、学生へのアドバイスを参考に学習者中心の授業を作り、意欲のない生徒も巻き込んで学習者中心の授業を作り上げていました。
まとめ
県の中心部から離れた、過疎化が進み衰退していってしまう状態をどうすれば活性化できるかという、子どもや教師のみならず、地域や大人への学びにも繋がるようなアプローチがされています。
ラストは解決するかと思いきや、続きがあるのかな…?
と思うような場面で終わっています。
答えのない時代に模索していかなければならないのは大人も同じなんだよね。
前田先生から、Facebookにて以下のようなコメントをいただきました。
特に今回の本では、第8章がまるごと問題提起です。
p150 竜南先生の「そ・・・そうか・・・」の意味は?
p153 なぜ、若い奈毛君は商店街の行く末を心配するのか?
p157 「勝手なマネを」とつぶやく古井さんはなぜそう考えるのか?
p160 音無さんが言う「本当の価値」とは?
p162 町を出なくてはならないという現実にどう向き合うか?
p166 維持することも取り壊すこともできない古い施設をどうするべきか?
この第8章には、私の様々な思いをこめました。
それぞれの立場の人々が、それぞれの価値観で問題意識を持ち始めるということ。この本を書くために取材してみて自分自身が問題意識を持ったことを凝縮したものなのかもしれません。
まんがで紹介されていた「大人の学び場」をすでに実施されています。
今回もコラボして未来の社会を考えるビジネス書が何冊か紹介されており、何冊か図書館で予約しました。
私もおすすめの本も紹介されていて嬉しくなりましたね♪
今作での伏線はどのように回収されていくのか、次作の展開が楽しみです。
この春の「読んでおきたい一冊」に加えてみてはいかがでしょうか?
「まんがで知る教師の学び」シリーズのご紹介はこちら!
ではまた☆
[セミナー]「みんなのオンライン職員室」ってどんな感じ?ZOOMを使って未来の教育について語り合おう!
「学び続ける教師でありたいけれど、事情があって夜や週末に外出するのは難しい」
「教員として、成果を出している人の話を聞いてみたい」
私も子ども3人を育児中につき、平日夜や休日に外出するのは難しい状態です。
また地方に住んでいると、セミナー参加のための交通費や宿泊費がない人も多いのではないでしょうか。
いつまでも学び続けたい、そんな人達と繋がれるのが「みんなのオンライン職員室」です。
みんなのオンライン職員室ってどんな集まり?
私はFacebookでフォローしている杉山史哲先生のつぶやきから、「みんなのオンライン職員室」を知りました。
PCやスマートフォンからZOOMというオンラインビデオ通話が可能なツールを使ってゲストのお話やディスカッションを行います。
1時間を三つのパートに分け、
はじめの18分は講演者ゲストのお話、
その後にディスカッション、
最後にゲストが質問に答えている形をとっています。
3月からは有料になるそうですが、2月は無料月間だったのでお試しで参加してみました。
ツイッターで「#みん職」ハッシュタグが付いているつぶやきを見ると、多くの先生方が参加しているようです。
今回のゲスト、フリーランスティーチャーの田中光一先生のお話がなかなか刺激的だったので、感想を記しておきたいと思います。
田中先生の教員歴と、フリーランスティーチャーという生き方
田中光夫先生は、東京の小学校の教員の経験があり、退職してフリーランスティーチャーとして短期間クラスに入ることでクラスの立て直しを行っています。
教員のキャリアは14年ほどで、教員人生をグラフに表すと3年おきくらいに落ち込みの波があり、落ち込んだ時には新たな学校へ異動をしていたそうです。
また3度目の落ち込みは、オンラインゲームにはまるという仕事とは関係ない理由(笑)。
日中は35人の生徒をまとめ、夜は80人のオンラインゲームのプレイヤーをまとめ…夜中までプレイしていたそうです。
田中先生がすごいのは、4年目にして「5時に定時退勤するのでよろしくお願いします」と宣言してから仕事をしていたとのこと。
なかなか真似ができないことだなと感じました。
私の校種である高校は、部活があるため生徒の最終下校がそもそも退勤時間の3時間後となっており、12時間勤務が当たり前になってしまいます。
その辺り、小学校の教員は「定時退勤の可能性」が中高の教員に比べてかなり高そうです。
臨任教師という扱いではありますが、午前中だけ勤務してひと月に20万円ほどの収入があるそうです。
午前中はフリーランスティーチャーとして働き、午後は大学で教えたりと弾力的な働き方ができるのも魅力だと感じました。
このような働き方ができる背景には、最近は教員の大量退職の時期を過ぎて若い教員がたくさん採用されていることがあります。
近年教員が多忙であること、職員室の年齢構成がいびつなこと、愚痴をこぼしたりメンターになる教員がいないこともあり、メンタルを病んでしまったり、途中でリタイアする教員も増えています。
そのため、4月9日から担任がいないというような深刻な事態も発生しているそうです。
もし自分がフリーランスティーチャーになったら??
もし私がそのような働き方をするとなった場合は、経験豊富で歓迎されるフリーな立場というよりは、いつクビになるかわからない非常勤講師という立場の方が妥当でしょう。
何か特別なスキルが身についていると良いのですが…現実的には難しいと思います。
ただ、小学校は中学高校に比べ近所にもいくつもありますので、家の近くで働けるというのはいいのかもしれません。
中学高校のように、クラスの増減によってコマ数が確保できないという事態も避けられそうですし…。
小学校の教員免許を取って、臨時採用で働くというのもあるかもしれません。 (いや、でもそれ経験豊富なフリーランスティーチャーと違うわ)
みんなのオンライン職員室の感想
オンラインでこのような学びができるのは素晴らしいことです。
ただ、今回は田中先生のお話をもう少し伺いたかった!
ディスカッションをする時間には、1人になれる場所がないため、残念ながら退出してしまいました。
職員室なわけだから、志が同じ方々とディスカッションできるのが強みなのにね…。
でも、オンラインで会話するのが慣れてないんだよぉぉ〜。
次回のさる先生のオンライン職員室にも参加を予定しているので、その際には可能であればぜひディスカッションまで参加したいと思います!
参加者の方のまとめがすごい!
今から #みん職 です!
— kathy@ECCジュニア美香保教室 (@ECCmikaho) 2019年2月22日
パソコンでセミナーに参加できる時代がきたのか! pic.twitter.com/UHU8r3ZxGA
早起き苦手な私にもできました、朝活。マーシャル諸島に図書館をつくる活動を応援しているので子どもに話すために田中先生のお話を直接きけるチャンス待ってました。
— kathy@ECCジュニア美香保教室 (@ECCmikaho) 2019年2月22日
熱い先生に、元気もらいました。
今日のノートも公開してよいとのことなので、ごちゃごちゃですが😅#みん職 #ノートテイキング pic.twitter.com/H0mCQLq39A
申し込み間に合った!
— キタエリ@『学び合い』奈良 (@natchatchan) 2019年2月22日
SNSでうわさになってる尖った実践者(でも話しかけるのには勇気のいる人)の肉声を、同じく気になってる人と一緒に聞けるという点でこの取り組みはとてもよい。#みん職 https://t.co/TKfTAIw6kr
まとめ
以上、みんなのオンライン職員室に参加した感想でした。
オンライン職員室で話された先生の講演をアーカイブとしていつでも聞けるような状態になっていたら、だいぶ使い勝手がいいのかなとも思いました。
若い方達が新しいテクノロジーを使って学び続けるプラットホームを積極的に作っている姿が眩しい!
実務に活かせるよう、ゲストティーチャーの生き方を取り入れていきたいです。
オフライン職員室もある様子!この日出勤日じゃん…残念。
【予告の予告】
— みんなのオンライン職員室 (@minnanoonline) 2019年2月23日
春休み
来たる3月27日にイベントを行います
その名も
\ みんなのオ'フ'ライン職員室 /
いつものオンラインのZOOMから
セシオン杉並に会場を移し、リアルに対話
登壇者
田中光夫氏 @kariageshokudou
坂本良晶氏 @saruesteacher
杉山史哲氏 @symphonicity
乞うご期待 pic.twitter.com/hAmEvkbPDD
ではまた☆
[書評]気鋭の教育学者、苫野先生の苦悩と哲学が学べる!本「子どもの頃から哲学者」
「哲学って宗教とどう違うの?」
「哲学は教育に役立つの?」
私は、高校の倫理の授業で挫折したクチです。
苫野先生の、
「勉強するのはなんのため?」
新書「教育の力」
を過去に読んでます。
著者はイケメンで頭もキレるし、今までの人生もさぞかし輝かしかったことでしょう。
と思っていたら…この本で大きく覆されました!
手塚治虫を愛し、ほかの子がハマっているテレビゲームには見向きもしない。
孤独を愛しているフリをしているものの、周囲から愛されたい欲求が。
高校、大学とさらにこじらせなんと8年間も躁鬱を繰り返し、2日間笑いと嗚咽が止まらないという状態を周囲に見られドン引きされてしまう…。
そんな苫野青年を救ったのが哲学!
人類の歴史の中でどんな哲学者が何に悩み考えを深めていったのか、著者の当時の悩みに寄り添っていて読みやすかったです。
「なぜ哲学書が読みにくいか」
も理解できました。
哲学の力を信じたい。
今回は、私を含め先生方の悩みに役立ちそうな哲学者の考え方をご紹介します。
正しいことなんてない、からの脱却
現代の哲学はあらゆるものを早退し尽くした、これをポストモダン思想と言います。
自分たちが絶対に正しいと主張して殺し合う悲惨なイデオロギー戦争が20世紀までの戦争だったからです。
しかし、正しいことなんて何もないと言ってるだけでは、それならばどんな社会なら良いのかという答えは見えてきません。
お互いの信念をただ主張しあっていたら、どちらが正しいかの言い合いになっています。
しかし、その信念の底にある欲望の次元までさかのぼってみることで、
「そんな理由でこんなことを考えていたんだね」
という一定の共通理解が生まれる可能性があります。
自分が自由に生きたいのであれば、それを主張し合うだけではなく、他のみんなも自由に生きたいんだということをまずはお互いに認め合う。
これを、自由の相互承認の原理と言います。
これは二百数十年前に、ヘーゲルによって示された考え方です。
なるほどそうだね、と多くの人が納得できる解が哲学
哲学の用語では原理的といった普遍的といった言葉を多用します。
それは絶対の真理ということを意味せず、誰もが、
「なるほど、それは確かにその通りだね」
と言えるかどうか、哲学はそういうものだそうです。
つい、絶対的な答えなのかな…って思っていました。
誤解が解けて良かったです。
なぜ、哲学書が難しいのか?
哲学書が難しい理由の一つに、当時は社会でその概念がなかったことで、哲学者が頭をひねって作り出した新しい言葉だから、ということが挙げられます。
当時の哲学者にとっては新しい概念だったにもかかわらず、私たちにとってはすでに当たり前のことになっていることも多いです。
「なぜそういった概念を新たに、難解な言葉回しで学ぶ必要があるのか?」
といったこともモチベーションが下がる理由の一つに挙げられると思います。
先程申し上げたように、高校時代の倫理の授業は先人の考え方をなぜ暗記しなければならないのか、と疑問に思う苦手な科目でした。
苫野さんのようなわかりやすい哲学書があると大変助かります。
この本は悩み大きい、高校生や大学生にもぜひ読んでもらいたいですね
まとめ
著者は哲学に出会うまでの間、自分の問題だけに精一杯で社会のことにはほとんど関心がなかったそうです。
しかし哲学を学んだ今では、これからの世界をどう構築していけばよいのか、なんてことを探求できているそうです。
「自分とは何者なのか??」
という狭い視野の中だけでなく、社会との関わりの中で自分というものを考えていけることで自分の内側の狭い悩みから脱出できるようですよ。
ちなみに哲学者は、元々うつ傾向の人が多いらしいです。
苫野一徳青年が衝撃を受けて師事した哲学者は、竹田青嗣先生です。
新書なら、読みやすいかもしれませんね。
ではまた☆
[学校見学]「協同的な学びで学校を変えた」高校へ!授業改革と生徒指導は改革の両輪。
今年は、新しい教育課程を作る委員のメンバーになっています。
その一環として、
「協同的な学びで学校を変えた」
という触れ込みのS高校へ出張してきました。
午前中、3時間の授業見学と、1時間の懇談というなんとも贅沢なスケジュール!
お付き合い下さった先生方に感謝です。
カリキュラムはなんとも普通
新カリキュラム研究のためもあり、教育課程表を拝見したところ、1.2年生までは全て必修。
3年生で選択が3科目あり理系文系、進学クラスは設定しないという教育課程表でした。
一学年5クラス、一学年の時は手厚く6クラス展開をしています。
英語や数学の授業は少人数授業を行っています。
総合的な学習の時間については、週に1時間ほど担任が進路の時間として活用しているそうです。
自分の気持ちを表現する、書かせるという指導を重んじているということでした。
見学した授業は、グループやペア学習が保障されていた
3時間ほど授業を見学しました。
3年生の日本史、2年生の英語、1年生は現代社会。
それぞれペアワークやグループ学習の時間が設定されていて、寝ている生徒は1人もいませんでした。
一クラスが30人前半のため、教室もゆったりしており、生徒1人1人に目が行き届くようになっています。
3年生の日本史では、4人班はそれぞれ室町時代の疑問点を取り上げ、それに対して違う班が答えをホワイトボードに書いていきまとめるという授業でした。
2年生の英語では、教科書の文章をスラッシュで区切り、ペアでシャープペンシルを渡し合いながらのゲーム要素もありつつ音読を進めていきます。
最後は歩き回りながらペアで暗唱できた部分にサインを貰い、4人サインを貰ったら椅子に座ってよし。
座った人はジャンケンで必ず負けて暗唱を聞く係をするというワークで終わりました。
1年生の現代社会では、死刑制度について賛成か反対かという議論をまたもやホワイトボードで記録し、4人組で発表するというワークをしていました。
勤務先と同じ偏差値帯のはずなのに、生徒が予想よりははるかに落ち着いていました。
5年前は荒れていた!徹底した生徒指導で生徒が落ち着く
先生方との懇談では、S高校に5年いらっしゃる1年生の学年主任の先生とお話できました。
この学校にベテランが異動希望を出すことは皆無に等しく、基本的には新採用の先生が毎年何人も入ってくるのだそうです。
数年前は学校全体が荒れており、お化粧を授業中にする生徒、廊下で生徒のうろつき、教室での殴り合いの喧嘩もあったとか。
しかし、校門前に教員が立ち朝と帰りに化粧を落とさせたり、スカートの丈を戻させる指導を始め、当たり前の学校生活ができるよう徹底的に取り組みました。
携帯の授業中の使用は1週間預かり、その他の違反物は年度末まで預かるものもあります。
継続した指導が功を奏し、2,3年ほど前からはだいぶ落ち着いて、教員も生徒も授業に集中できるようになったそうです。
授業研究から学校改革が始まったとはいえ、生徒が学習するためには落ち着いた環境が必要。
「生徒指導なしの授業改革はあり得ない」
ということでした。
風紀的に見て、高卒で就職する場合に推薦できなさそうな生徒は見当たりません。
私の勤務先は違反物のペナルティーがないこともあり、授業中もスマホをいじり、化粧し放題、机の上に飲み物が置かれているような状態。
是非真似できるところがあればしたいとも思いますが、厳しい指導に反対する先生も一定おり、難しいかもしれません…。
正直、教員が学習性無気力症に陥っているかな…
少人数で落ち着いた規模でも、1割の生徒が欠けている
高校は空き教室が多かったです。
少子化で1学年5クラスで学年がスタート。
毎年少しずつ退学していき、9割しか生徒が残っていないとのこと。
学校のパンフレットにも
「協同の学びを大切にします」
という文言が書かれており、この高校に赴任した先生は必ず授業研究会で授業を公開しなければならない決まりになっています。
しかし非常勤講師の先生にはそこまでお願い出来ず一斉授業になっているとのことです。
進級に関しては、3科目まで欠点があれば年度末に追試が受けられ、一科目でも落とすと留年もできません。
それまでに欠点課題が学期ごとに出され、テストの点数だけでは判断しないようにされています。
ただ、四則演算ができない、英語のb、dを間違えるようなLDの生徒に関しては特別支援の専門員が巡回してきて放課後に指導を行い、予防的措置を施しているとのこと。
正直、上位層の生徒に講習を行うなどの進学指導は出来ていないそうです。
おまけ 田奈高校と同じく居場所になる図書館あり!
教室内に非常に魅力的な図書館便りが貼られており、授業見学のついでに図書室も見せていただきました。
(図書室便りにlearn bettrを紹介ってステキ!)
神奈川県立田奈高校のぴっかりカフェを模したような明るく生徒の居場所になりやすいようなデザイン。
マンガが3000冊、ラノベもかなり多く、昼休みのみ、生徒が図書室で飲食できるようになっています。
畳のスペースもあり、非常にくつろげると感じました。
文化祭が近いのでコスプレ読本、文化祭の企画本など生徒が手に取りやすいような薄さの本が平置きされていました。
地域の若者サポートステーションとタイアップしており、お茶とお菓子が無料で出る「カフェ」も月に1度行われているそうです。
まとめ
以上、とても参考になる学校見学でした。
印象的だったのは、生徒が使っている教科書の上部に全て氏名印を押していたところです。
本校の生徒もよく教科書をなくしてしまうので、教科書の上部(調べたら、天と言うらしい)に氏名印を押すアイデアは大いにありだと感じました。
ハンコ押してから教科書を渡すのかなど、ちょっと気になっています。
厳しい生徒指導で「やんちゃ」な生徒が目立たなくなっているからか、無気力な生徒が相談もなく辞めてしまう…ということもあるそう。
勤務先は常にお祭りのような騒がしさ、廊下では女子の叫び声、男子は走り回って追いかけっこをるような状況が日常的にあり、頑張りたい子が腐ってしまう…。
見学して、実際に改革に関わった先生にお話を伺うことで
「授業さえ変えれば、生徒は授業中にスマホをやめて楽しく参加してくれるはず」
という見通しは甘いということがわかりました。
生徒が自ら考え行動できるようになるような学校になったら言うことなし、なんでしょうけどね…。
ルールを守ることをまずはやっていかなければ、授業改革にたどり着くのは難しそうです。
ではまた☆
[働き方]私立学校で、労働基準監督署の是正勧告により職場に起きた変化とは?
「職場の労働環境はどうすれば良くなるの?」
「労働基準監督署の是正勧告が入ってどうなった?」
最近教員が労働環境について声を上げることが多くなってきました。
この「まなびと」のTwitterからも情報発信をするようになってから現役の先生方とも交流するようになりました。
匿名で、教育実践のみならず労働環境についてツイートをしている方が多いです。
「これだけ酷い環境で労働しているのはやりがいを通り越して辛い」
「なりたくて教員になったけれども、自分の身を守るだけで精一杯。周りの新人の先生が潰れていくのを見ていくだけ」
といった悲しいツイートを目にすることもあります。
私の勤めている職場は離職率はそれほど高くはありませんが、度重なる生活指導や労働時間の長さなど、他の学校と同じように問題を抱えています。
組合員で積極的に活動している先生方は、労働環境を良くするために日々努力していらっしゃいます。
それでもなかなか仕事のルールが変わらない状態のなか、数年前に勤務先の高校に労働基準監督署の是正勧告が入りました。
是正勧告のお陰で仕組みづくりがすすんだのか、もともとそうなる予定だったのか?
労働基準監督署の是正勧告の前後に起きた労働環境の変化について書いてみたいと思います。
タイムカードが導入された
以前の勤務先ではタイムカードが導入されていたため、今の職場で働き始めてタイムカードがないことにびっくり。
残業しようがしまいが給料が変わらないため、勤務日ににハンコを押すだけで勤怠管理していました。
しかし、是正勧告があってから、ICカードでの勤怠管理を行うようになりました。
自分がどの程度、何時間働いたのか、職場のサイトからも確認することができます。
また、規定時間以上の残業があった職員に対しては、産業医の面接が行われます。
36(サブロク)協定が結ばれた
雇用者と組合の間で、36(サブロク)協定が結ばれました。
あまり詳しくは分かっていなかったのですが、「時間外・休日労働に関する協定届」ということで本来は協定届をしないと時間外、休日労働はさせるのは違法らしい…?
労働基準法第36条には
「労働者は法定労働時間(1日8時間1週40時間)を超えて労働させる場合や、休日労働をさせる場合には、あらかじめ労働組合と使用者で書面による協定を締結しなければならない」と定められています。会社が法定労働時間以上の残業や法定休日出勤を従業員に課す場合には、本来は労使間で「時間外労働・休日労働に関する協定書」を締結し、別途「36協定届」を労働基準監督署に届け出ることになっています。
勤務先にも公立学校の教員と同じように調整手当があり、一定の割合で支払われています。
調整手当に加えて、毎月一定時間以上の残業が重なった場合には残業代が出るようになりました。
とはいえ、校長が認める、指示した残業についてのみです。
授業準備をしたり、学級通信を書いたり、部活での残業には当然残業時間分の手当はつきません。
「労働安全衛生委員会」が発足した
職場に作らなければならないはずの労働安全衛生委員会が発足しました。
何人かの職員が集まり、職場環境が安全かどうかアンケートを取ったりしています。
ただし、このアンケートが取られたからといって、職員室の環境が改善することはあまり無いように感じます。
職員室の荷物の高さ制限とかね。
あ、でもトイレの洋式化は実現しました。
個人的には、勤務時間の喫煙は控えてほしい!
しかし、アンケートに書いても改善される見込みはなさそうです。
この委員会に参加することで、労働時間が長くなってしまう人がいるのも少し考えものです。
夕食補助がなくなった
我が職場には長年、勤務時刻が19時を過ぎると一定程度の夕食補助がつくという謎の仕組みがありました。
夕食が届いてから食べるまでの時間に仕事をすればもっと早く帰れるのではと思うのは私だけでしょうか。
長時間労働を助長するような仕組み…?
やっと補助がなくなり、予想していた通りに多くの職員の労働時間は短くなりました。
さまざまな仕組みのお陰で、労働時間が短くなった
上記のような取り組みで、職員の労働時間はかなり短くなったようです。
100時間を超えるような超過勤務をしている教員は数えるほどになりました。
多くの教員が19時過ぎに夕食補助を取り、夕食を食べてからまた一仕事ということで10時過ぎに帰る教員も多かったようです。
(私は、子どもの保育園の送迎もあり、遅くとも19時までに職場を出るようにしています)
施錠時間が早まったこともあり、多くの教員は21時前後に帰れるようになりました。
まとめ
労働時間に関しては、個人の努力で帰宅時間を早めることも可能ではありません。
でも、ゲームのルールが変わらない中、そこで上手くやろうと努力するのって限界がありませんか?
そもそもの「働き方」ゲームのルールをどう変えていくかがこの教員の働き方改革に求められている気がしてなりません。
職場のどなたが、労働基準監督署に申告をしたことで労働基準監督署の是正勧告が入ったことになります。
私立学校は公立学校と異なり、民間企業と同じ扱いになります。
是正勧告が入った場合には改善をしなければならないので、外圧を利用するのも一つの手。
なるべくなら教育環境をを気にせずに教育実践を中心にこのブログで書いていきたいのです。
でも、現実は教員といえども労働者。
働く環境を改善していくことで、教員が毎日元気でいられることもよい教育をしていくためにも大事なことですよね。
ではまた☆
[書評]なぜ偏差値50の公立高校が世界の大学から注目されるようになったのか?!
「学校ってなかなか変わらないよね…」
「今のままの学校制度だと、今子どもにつけたい力がつかないんじゃないかな?」
そんな悩みを打破するような実践本が出版されました!
なぜ偏差値50の公立高校が世界の大学から注目されるようになったのか!?
今回ご紹介したい本はこちらです!
勤務先は偏差値40前後をウロウロ、わが子は偏差値25。
自分自身が偏差値にとらわれてしまっているため、Amazonでおすすめとして出てきたとしても絶対手に取らないような本。
しかし、岩瀬直樹先生のfaceboookにおすすめ本として投稿されていたので思わずポチしてしまいました。
読んで良かった!
読み途中なのに、職場や家で激しくおすすめするという事態に…!
大阪府立箕面高校の日野田校長・8つのスゴイ点とは!
だいぶネタバレになってしまいますが、内容についてご紹介しておきます。
1.校長が36歳で赴任、「校長は専門職である」という観点からマネジメント
→「校長は別に偉くないし、アメリカなど海外では若い校長も別段珍しくない」とのこと。
2.職員に「困ってることはありませんか」と聞きまわり、学校をうろついて廊下の掃除しながら授業の様子を伺う
→校長が校長室にいるままで、現場の授業の様子も知らないままでは学校は変えられない。
ですよね…でも、それできてない校長多いですよね…。
3.トップダウンではなく、サーバントリーダーシップ。多数決では特定の集団が必ず勝つため採用しない。議論を尽くす。
→始めのうちは、職員の方が心を開いて困ったことを話してもくれなかったそうです。
私なら、すぐに困ったこと言いに行っちゃうかもしれない。
そして、多数決を採用すると特定の集団が勝ち続けてしまうとか。
我が社の議決も、そういえば特定の考えを持った人が必ず勝ち続けているような…気のせいだろうか…。
(夫は、「それでも校長が考えたことが決まっていくんでしょ?それトップダウンとどう違うの?」って言ってましたけどね)
4.英語重点校になり、現場の先生では厳しいからとベルリッツに土曜日授業をしてもらう。日本語でいいからクリティカルシンキングなどグローバルな思考を身につけさせる
→グローバル思考とでもいいますか、「マインドセット」「多様性」など、まず生徒の考え方をインストールし直したいと考えたそうです。
確かに、日本人は講演でも質問しないし、自ら考えて行動できないと言われています。
「人の言うことを聞き、疑問を持たず従う」
ような教育を今もしている時点で罪深さを知るというか…生徒に申し訳なくなっちゃいました。
5.単なるホームステイと現地校での学習では力がつかないと考え、MITでアントレプレナー教育を実施。こちらもベルリッツ同様外部の力を借りる。費用のない生徒のために学内でも海外の大学生を呼び、ワークショップ実施。海外の大学生とコネクションも持てた。
→現地留学のプログラムを考え、実施するところまではなかなか難しいですよね。
とりあえずパッケージプランにおまかせしてしまうというか…。
生徒にとってはかなりハードだったようですが、自分で発言したり行動したりする力がついたようです。
6.社会起業家的な視点を身につけた生徒が海外の大学に行きたいとなり、2017年度には30名以上が海外の大学に進学
→地域4番手の高校と言うことですが、東京の私立中高でもこれだけの成果を出すことは難しいでしょう。
「高校3年間で生徒のマインドセットを変えていくのは難しい。中高6年間あればいいのに」
と思っていましたが…3年間でも生徒自身が変わりたいと思える経験をさせてあげられるかどうかにかかっているかもしれません。
我が身を振り返り反省…。
7.教員の働き方改革も実施。教師の負担になっている仕事を教員から上げてもらい削減。
→21時まで残っている先生に、
「帰りましょう」
と声をかけ続けた。
なぜ、しているのか目的がよくわからない行事を削減するなどして、
「家族のために働いている」
を実現する。
我が社でも実現できないだろうか…。
8.職員や生徒の対話が進むよう、ひとまちのホワイトボードミーティングなど研修を入れる。壁をホワイトボードにして教室にも導入。議論を見える化
→私も、職場で
「クラスで話し合い活動を活発に」
と管理職から言われています。
でも、教師自身が話し合いの方法を分かっていない。
40人いる教室で、司会から
「話し合ってください」
と言われて機能する教室は1つもありません。
だから、夏の研修にホワイトボードミーティングを入れてほしいとお願いしたのですが、、、
「ハウツーなら本を読めばいい。もっと勉強になる講演を聞いて職員の考えを深めるべきだ」
と言われて却下されました。
夏の研修会は、講演が2本。勉強にはなりましたが…
「教師に必要なスキルを身につける研修」
も必要だと思うんですけどね〜。
まとめ
本を読み、自分の職場で何が採り入れられるのかな〜って考えてみました。
ちなみに、偏差値50は河合塾のもので、みん高では65でしたよ。
オイオイ…。
本に書かれてるような、地域4番手ってうちの近所だとホントに偏差値50なんだけど?
家でオットともこの話題て話せて、よい対話が出来ました。
まだ多くの人に読まれていない本のようですが、おすすめします。
日野田先生登壇のイベントも知人から教えていただきました♪
10/14に開催されます。
予定…空いてるかな…
ではまた☆
[書評]「私学流 特別支援教育」私学の現状、教室支援とカウンセリングの取り組みがわかる!
「特別支援教育は公立学校に任せておけばいい」
「高校には特別支援教育が必要な生徒はいないはず」
公立学校では高校まで特別支援教育の必要性が浸透してきたようですが、私立学校はまだまだそこまでたどり着いていないようです。
2016年4月1日に障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が施行され、「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」が内容の中核となりました。
しかし、上記の項目については、国及び地方公共団体はその両方が法的義務とされるのに対し、事業者は前者のみが法的義務で後者は努力義務とされているのです。
>>障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 - 内閣府
この本では、私学の特別支援教育が進まない背景や、実際に特別支援教育を念頭に入れた学習指導や生徒指導を行っている具体例を示してくれています。
私立学校で特別支援教育が進まない背景
上記のように、私立学校では合理的配慮が努力義務であるため、特別支援教育がなかなか取り入れられていない現状があります。
例えば入試相談会の席上で発達障害のことを話題にした途端、学校が対応が冷たくなったりということがいまだにありますよね。
よく私学は、指導のきめ細やかさや面倒見のよさが売りであると言われています。
そのエビデンスは「特別支援教育においてはどこにあるのか」首を傾げざるを得ない状態もあります。
実際の数値で見てみると、私立中学高等学校においては
- 特別支援教育コーディネーターの指名は4割前後
- 個別の指導計画に至っては1割
という残念な結果に終わっているそうです
私も私立学校で勤めてきて、この本にあるように
「意識の壁として教科指導が教員の本分であり、特別支援教育は専門家のやることだと考える教員」
「経営的に見ても、特別支援教育については手間や人員がかかるため効率性の悪いものにはなかなか予算がつかない」
といった傾向があると感じています。
行政機関との繋がりに関しても、私立学校の場合は地域を超えて入学してくるために生徒の住まいによって連携機関を帰ることや小中との連携が難しいことなども挙げられました。
教室での特別支援教育
この本では、教室での特別支援教育の例がいくつか挙げられています。
- 空気が読めない博士タイプ、指示が教員が言った通りに行動できない生徒
- ユニークな生徒として受け止められている生徒
- 落ち着きがない生徒
- 中学受験をなんとか突破してきたにも関わらず、英語学習について困難が見られる生徒
- 提出物を出さず、成績が振るわない生徒
など、いわゆる入試を突破してきた生徒ですら、入学後に困難を示すことが結構あるのだということがわかりました。
いわゆる偏差値帯が低い学校の支援教育だけではなく、偏差値が高い学校、ギフテッドの生徒が多く在籍すると思われるような学校の先生も執筆している点が個人的には興味深かったです。
カウンセリングルーム相談室の整備
私立学校でも株学校にスクールカウンセラーを配置したり、相談室を設置したりする動きが活発になってきています。
スクールカウンセラーは常駐していると生徒や保護者の面談もスムーズですし、担任が1人で生徒指導を抱える必要がなくなります。
また、スクールカウンセラーの呼びかけにより学年でのケース会議も開催できます。
相談室があれば、生徒は何か思わしくない行動があった時に個別に落ち着いて過ごすことができるようになります。
執筆者の勤務先で相談室が設置されている例をいくつか読むことができました。
現在、大学では国公立私立によらず、発達障害学生の支援の仕組みが急速に整えつつあります
全ての大学のうち、障害のある学生に対して授業支援をしているのが61.7%、授業以外の支援を実施しているのが52.9%にのぼり、私立高等学校の支援状況を上回っているそうです。
私も、発達に偏りのある生徒の大学進学指導に関しては、カウンセリングルームや学生相談室が充実している大学を勧めています。
まとめ
私立学校の売りとして、
「特進クラスを作りました」
「ICT活用に力を入れています」
「海外留学ができます」
といった点をアピールしますが、
「特別支援教育に力を入れています」
というアピールをする学校は出てくるのでしょうか。
子育てをする保護者の視点から見ると、そういった私立学校がもっと多くでてきてほしいとは思います。
指導する側としてはもっと一クラスの人数を減らしたりチームティーチングが行われたりといった手厚さが環境への手厚さがもう少し欲しいところです。
この本の終章にあるように、近い将来
「私立学校でも特別支援教育が行われて当たり前、ウリとして伝えなくていい」
の状況になっているといいなと感じました。
私の周囲でも、特に博士タイプの男の子をもつご家庭では公立中学に進むと内申点がもらえない可能性があるため、試験だけで突破でき、同じようなタイプの仲間がいるだろうと中学受験をさせる予定という声をよく聞きます。
そのような生徒が集まるだろうと思われる、麻布や武蔵などの進学校の先生も執筆されていたことが意外な驚きでした。
私立学校の特別支援教育がより良い方向に進む道しるべになる1冊!
おすすめです。
ではまた☆
[セミナー]背筋も凍るスクールロイヤーの話から、やっぱり個人賠償責任保険に入ろうと思った話
弁護士でかつ、学校の先生がいらっしゃるってご存知ですか?!
淑徳中学校・淑徳高等学校の社会科教師であり、3年生のクラス担任や部活の顧問も務めている神内聡先生もその1人。
先日、セミナーで神内先生のお話を聞く機会があったのでご紹介したいと思います。
NHKでも、ドラマが製作されていましたね。
「やけに弁の立つ弁護士が学校で吠える」
法律関係のお友達は見ていましたが、私は学校を舞台にしたドラマがどうも苦手で…(すみません)金八先生を録画して見るタイプじゃないのよ。
でも、神木隆之介くんが主演だったのか…バクマンで見て演技ステキだった…もったいなかったな…。
以前は、
「学校内弁護士」
と名乗っていたそうですが、現在では
「スクールロイヤー」
と名乗ったほうが相手の理解が早いそうです。
セミナーでは、ここには書けなかったオフレコトークとともに学校と弁護士、それぞれの立場についてわかりやすく説明してくださいました。
ぜひお話を聞いてみてください。
「スクールロイヤー」による、生徒指導上の諸問題
お話を伺いながら、印象的だった内容をメモしてみました。
日本の生徒指導の法的問題として考えられることは…
・小中学校では公立私立問わず、いかなる場合も「停学」ができない。→海外ではこのような法制度の国はない
・小中学校では公立は「退学」が、私立は「出席停止」ができない→海外ではこのような法制度の国はない
・「体罰」は例外なく禁止→アメリカ、イスラーム諸国では体罰ができる場合を例外的に設けている。
・日常的に児童生徒と身近に接する教員の仕事があるため、生徒指導でもトラブルが発生しやすい→
海外ではこのような生徒と緊密に接する教員の仕事はない。
海外では3時過ぎに生徒が帰ったら教員も帰宅する。
学校を出たら子どもの責任は保護者がとる。
日本では、LINEなどのトラブルが起きると学校に対応が迫られるが、海外ではそのようなことがない。
・海外では、教員が生徒に接するときは厳格な「上下関係」が存在する。
日本の弁護士には、「子どもの人権」を根拠に生徒と教師の関係を「対等」に誤解する主張も根強い。
海外では卒業式も誰が担任だったかも覚えていないくらい。逆に、日本の教員はリスクもあるがやりがいがあるとも言える。
・子どもはなぜいけないことなのかしっかり説明しなければならない。
しかし生徒は保護者からも叱られ慣れていないことも多いので、保護者へも説明する必要がある。
・校長室に来る保護者は、録音機材が回っていると思ったほうが良い。
秘密録音は適法なので民事裁判でも証拠になる。
よく、
「文書で回答してくれ」
と言われることがあるが、言葉で説明しても記録に録られていると思ったほうが良い。
・学校は子どもを処罰したくて生徒指導しているわけではないが、そのあたりを警察の捜査のように考えている批判的な弁護士も多い。
子どもの更生に携わってきたのでスクールロイヤーになりたいという人が多い。
そういった人は、少年事件専門の事務所が多い。
・指導に従わないというシチュエーションのもとでは、教員が安全に関わる部分で手を出した時に体罰ではない場合もありうる。
・いじめ防止対策推進法ガイドラインの改定があり、教師の負担が重くなる可能性がある。
いじめに関する情報を抱え込んでしまい、いじめ対策組織に報告しないことは、いじめ防止対策推進法23条1項に違反しうる。
今回の改定を行ったいじめ防止対策協議会には現職の現場教員は1人も含まれていない。
いじめの重大事項に当たるからと調査委員会を開けと保護者から申し立てがあった。
正直、いじめの事案ではなく家庭の福祉の事案であることも多い。
・担任と部活のリスクは比較できないほど部活の顧問のほうが重たい。
特に運動部。
雷が予見できないのに部活を行っていた時に落雷があり、生徒が亡くなってしまった。
その結果、裁判で3億円の賠償額が個人の教員に命じられたこともある。
担任がそこまでの賠償責任を負うことはないのではないかとは感じる。
まとめ
以上のようなお話を伺って、神内先生もおっしゃっていたのが
「私立学校の教員こそ訴訟保険に入っておけ!」
でした。
公立の教員は公務員であるため、裁判を起こされても賠償金を払うのは地方自治体である。
しかし、私立学校の場合は個人に対して裁判を起こされた場合、自腹で賠償金を払わなければならない可能性があるそうです。
訴訟保険は2つくらいしかないらしい…。
調べてみたところ、学校ごとに入る賠償保険にまず入っていて、個人に対してもカバーされているかどうかを確認してから入るか決めたほうが良さそうです。
過去にも、個人賠償責任保険については記事を書いています。
「弁護士」の考えと、「学校」の考えの差についても知ることができました。
確かに、保護者が弁護士をつけて学校に来たときも、弁護士の話に「?」となってしまうことも多いようです。
その橋渡し役をしてくれるスクールロイヤーの存在は心強いです。
同じ学校に勤めている同僚から、気軽に相談を持ちかけられることもあるとか。
もちろん無料!
うちの学校にも1人いると、気軽に生徒指導上の悩みについて相談できるのでしょうね。
専門家向けの本ですが、神内先生が執筆されています。
学校に一冊いかがでしょうか。
ではまた☆
[書評]教育困難校の取り組み「再チャレンジ高校」「新座高校の学び」2冊を読み比べ。
「進路多様な学校の生徒たちの様子は?」
「生徒たちに有効な授業や接し方は?」
生徒たちに有効な授業や接し方については、私もいつも迷っています。
進路多様な高校の実践本として、以下の2冊を読みました。
どちらも2018年に発売された、新し目の本です。
もし、偏差値的に似たような学校に勤務しているのであれば、ぜひどちらも読んでみてほしいです。
県立! 再チャレンジ高校 生徒が人生をやり直せる学校 (講談社現代新書)
再チャレンジ高校として、小中学校でつらい思いをしてきた生徒を受け入れている槙尾高校の数年間の取り組みについて書かれています。
勤務校と生徒層が近く、読み進めるのが苦しい場面もありました。
槙尾高校と同じく、家庭の教育力がないばかりか毎日虐待など穏やかに暮らせない生徒も少なからずいます。
参考になる点も多くありましたが、一日の殆どを占める授業への取り組みは少なめ。
過酷な環境を生きている生徒への授業外の指導に多く紙面が割かれていて、やはり困難校では授業を中心に学校づくりをするのは難しいのかなと少しガッカリ。
「◯◯科の教員である」と紹介されていても、そのことが全く意味をなさない(笑)。
夜の荒川河川敷を走る、金八先生みたいな話がゴロゴロと…。
ルポルタージュとして書かれているので、センセーショナルな取り組みが取り上げられるのは仕方がない面もあるかもしれません。
インバイトというアルバイトがすらできない生徒のために地域の商工会に依頼し、生徒の育成をお願いするという高校でのインターン企画。
これもなかなか続けるのが難しいことです。
北関東に槙尾高校ではと思う学校があり、ホームページを調べてみました。
本では触れられていませんが、この取り組みは二年ででストップしています。
アルバイトすら受からない、社会性のない生徒を学校外で育てるのは本当に大変です。
私の勤務先でも農業体験などのプログラムを組んだことがありますが、生徒があまりにやんちゃすぎて、二泊三日のプログラム中に生徒指導が多発。
地域の農家の方からも受け入れを断られてしまったため、3年で頓挫してしまいました。
取り組みのために、ものすごい長時間労働をされているだろうと推測されます。
例えば、校長や教頭、ほかやる気があるとされる教員が学校を改革するためのの打ち合わせが飲み屋ですすめられていく。
お酒が飲めない、子育てで遅くまで残れない自分としては、飲み屋インフォーマルな結びつきがなされていくのはなかなか厳しいものがあります 。
読み物としては◎。
「協働の学び」が変えた学校 : 新座高校 学校改革の10年
進路多様な、全校集会で生徒が並ぶのに40分もかかるような学校だった新座高校で、授業を変えていこうと月に一度の授業研究会をすることになった経緯や分析が書かれている本。
授業研究会では、
「教師の授業のやり方云々」
ではなく、
「生徒がこの授業でどのように学んだか」
を授業後に交流していく。
何年か続けていくことで、退学者や保健室の来室人数が減っていく。
授業成立のための、生徒指導含めた改革の取り組みの全容をもう少し知りたかった。
例えば、授業規律をどのように考えているか。
また、頭髪や、風紀指導はどのような取り組みをしているかということについては触れられていませんでした。
後半、地域からの入学者の推移と考察は面白い。
新座高校でも、近所の地域から入ってくる中学生が増えると地域でも認められている証拠だと考えていること。
また、生徒の学力が応募倍率によってかなり異なること。
そのため倍率が高かった年の翌年は倍率が下がりまた揺り戻しがあるということが3年のスパンで起きている。
負担の少ない学年で過ごしたいと思ったら、倍率の高い学年を選ぶと良いかもしれません。
もちろん、本書ではそんなことは書かれていませんよ。
倍率が1倍を切る学年は、他の学年と比較すると指導に困難が伴うということについては激しく同意します。
職員会議で、
「授業研究会を行うことには意味がないのではないか」
と言う揺り戻しの提案があったことなど、どこの学校でも新しいことを続けていくのは本当に大変なことだと感じました。
同じく進路多様校を描いた「再チャレンジ高校」は授業のことはほとんど出てこなかったのと対象的な一冊でした。
まとめ
再チャレンジ高校はルポライターが書いた作品で、新座高校は教育などの雑誌に投稿している先生方がまとめて下さったもの。
どちらの学校についても、
「もう少しこの辺が知りたい!」
「実際に見てみたい!」
という気持ちが湧いてきました 。
現在、新しいカリキュラムを考える委員会に入っているため、是非とも参考にしたいという気持ちが強いです。
特に、学力困難校での授業改革は効果があるのかということが気になっています。
困難校では残念ながら毎回の授業が成立せずに苦痛となってしまうからです。
高校の教員の多くが、
「よりよい授業をしたい!」
と思って教員になったはずなのに…。
そのあたり、偏差値が低かったとしても専門高校だと専門科目が多いため目的意識もある程度見いだせるのです。
就職もほぼ100%ですしね。
全日制普通、総合高校では授業の内容はほぼ大学進学向けの内容であるため、理解できない生徒がどんどん落ちこぼれてしまうのは仕方のないことなのか?
どうすれば困難校で授業が成立するのか、生徒と教師も楽しく授業ができるのかをもう少し考えてみたいです。
どちらの学校にもつてがありそうなので、近いうちに見学に行ってみたいと思います。
ではまた☆