まなびと!

自らが学び続ける教師でありたい。振り返りの記録です。

[書評]教育記者の良本「質問する、問い返す」主体的に学ぶ子どもを育てるにはどうしたらいい?

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「あなたは、主体的に生きていますか?」

「主体的に生きていける子どもを育てる教育ができていますか?」

そんなふうに問われたとき、とっさに答えられる人は多くないのではないでしょうか。

「主体的に生きる、学ぶ」

というテーマで、中学生から大学生までを対象にした岩波ジュニア新書が発売されています。

タイトルは、

「質問する、問い返す」

著者は、共同通信社で教育担当デスクをされている名古谷隆彦さんです。

発売されたのは昨年の5月ですが、Facebookの知人からオススメ本として回ってきました。

これから正解のない時代を生き抜くにあたって、主体的に生きる人たちにインタビューをしながら教育について考えた良書です。

AIに人間の仕事が奪われる?!

日本では、2035年頃までに半分の仕事は人工知能やロボットに取って代わられると予想されています。

なんと、著者の仕事である記者の仕事も安泰ではないと言われているそうです。

AP通信では、すでに企業の決算原稿の作成をほぼAIに任せています。

AIの書いた原稿はほとんど間違いを起こさないという特徴が導入を後押ししています。

このような単純な記述をAIに任せることで、記者はもっと人間しか書けない記事に力を注ぐことができるそうです。

AIの得意不得意を知る事は、

「人間が得意な力はどんなものなのか」

ということを改めて探る機会になります。

これからの人間に求められる力とは?

人工知能にできることを任せ、人間にしかできないこととはなんでしょうか。

自己肯定感が低い子供が育ってしまう日本

日本は、諸外国に比べてチャレンジしようとする人に対して冷淡で、失敗も不寛容な社会だと言われています。

日本の子どもは、

「失敗してはいけない」

と言う思考にとらわれてしまっているのではないでしょうか。

子どもたちの自己肯定感が低いのは、

「何もしない方が世間から叩かれずに無難に過ごせていける」

と言うメッセージを大人たちや教師が送ってしまっているからかもしれません。

すべての学力をペーパーテストで測れるか

すべての学力をペーパーテストで測るのは極めて困難と考えられています。

大手予備校の河合塾は、教科学力以外の能力を図るためにリテラシーテストとコンピテンシーテストと言う指標を開発しました。

>>PROGの特長 | PROG | 教育の研究・開発 | 大学受験の予備校 河合塾

リテラシーとは思考力以外にも情報収集力、情報分析力、課題解決力、構想力、表現力、実行力などを測定します。

コンピテンシーテストは最も可視化は難しく、周囲の状況に対応して行動できる対人基礎力、対課題基礎力、対自己基礎力の3つの分野について能力を図ります.。

他者とうまく関わり、協力したり共感したりする力も含まれています。

進学校では、教科の学力、リテラシーコンピテンシーすべての項目が高いオールマイティー方が半数近くいました。

ところが、教科学力とリテラシーは高いのに、コンピテンシーだけが不足している生徒も42%と高い比率で存在していることがわかりますした。

学力の極めて高い層に、人とかかわったり、一時の感情を制御したりする能力が低い生徒が予想以上に含まれていたのです。

現在の大学入試では、教科学力とリテラシーの一部分しか測定できません。

コンピテンシーを重視した大学入試が実施されれば、合格者の中身がかなり変わってくるかもしれません。

これからはグリットやレジリエンスなどの非認知的能力も重視されるようになってくるでしょう。

『学び合い』も紹介されていた

この本の中では、『学び合い』も紹介されています。

授業参観では学級崩壊に見えるような授業。

しかし、生徒はできる子が教えに行ったり、できない子がわからない子に聞きに行ったりして、それぞれが適していると思う方法で課題を達成します。

教えられると言う事は、そのことについて理解できていると言うことです。

子供が誰かに教えるときに、自分の思考過程を客観的にとらえることができているか、メタ認知能力が問われます。

そのような力を育てるのにも『学び合い』は役立ちます。

学校の先生は子どもの頃、勉強ができる人が多かったはずです。

そのため、子どもは何につまずいているのかよくわからないこともあるでしょう。

しかも1クラス40人の学級で、一人ひとりの生徒に合わせて個別化した授業を行うのは至難の技ではないでしょうか。

少し先を行く学びをしている生徒であれば、仲間のわからなさを理解して教えることができるかもしれないのです。

考え続けるために必要な「哲学」

大学などで、「哲学カフェ」という取り組みが広がっているそうです。

学校現場でも近年子どものための哲学対話と呼ばれる実践が始まっています。

いち早く問題の解決にたどり着くような思考のあり方とは一生を隠し、正解のない問いを深く考える態度を大切にします。

やはり、ここでも小学生は比較的自由に意見を言うが、高校生や大学生は教員の顔色を伺ってしまう。

「間違っていないかどうか」

を気にするので発言できない子どもたちもいるようです。

宮城県白石市は2016年度から市内の小中学校全てで子どものための哲学対話を始めたそうです。

www.sankei.com

この哲学対話では哲学対話を通して子どもが変化していく様子をが見られたそうです。

授業中の私語が止められなかった小四の男児が他者に話を聞いてもらえることを知り、その後はピタリとおしゃべりが止まったそうです。

またこの哲学対話では、

「子どもが良い意見を言っても褒めない」

と言うことを心がけているそうです。

特定の意見に教師が価値付けをすると、全体の雰囲気がどうしてもそちらに流れてしまうのだそうです。

この哲学対話の授業、小学校低学年から高校生になるまで続けていくことで、主体的に考え学んでいく姿勢が培われているいく気がします。

対話の習慣がない高校生に、自由な発言を求める哲学対話を行うのはなかなかハードルが高いですね。

まとめ

中高生向け、平易な文章で200ページほどで、1、2時間ほどあれば読めてしまいます。

今回、紹介しきれなかった上では他にも、

  • ハンガリーで医師を目指す日本人のエピソード
  • 福島の子どもたちが震災後に考えたこと
  • 学び続けるための意欲を引き出すためにはどんな授業が求められているのか

などなど、考えさせられる内容がたくさん。

ぜひ手に取って読んでみてください。

ではまた☆