[書評]子どもたちが社会に出る前に知っておきたい労働教育「しあわせに働ける社会へ」
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先日の記事の続き。
お友達が内容をつぶやいていた本をご紹介します。
岩波ジュニア新書とティーン向けなので、とっても文章が読みやすい。
社会に出る前に知っておきたいことが満載。
著者は元朝日新聞の記者で、労働と生活について記事を書いておられた竹信三恵子さんの著作です。現在は和光大学の教授をされています。
竹信さん自身が早くに父を亡くし、女手一つで育てられました。
就職時には女性も長く働けそうな、男女が受けられる唯一の新聞社を受け、結婚、子育てをしながら仕事を続けられて来た方です。
以下、知っておきたいこと、共感した考え方をまとめてみました。
「しあわせに働ける社会」を作って行こうとするときに最も大きな壁は?
「不況で仕事もないときに、しあわせに働くなんてぜいたくだ」という私たち自身の思い。
学生を教えていても、就職できなかった他の若者を「努力不足のせいだ」と避難してしまう人も出ている。
しかし今は、必ず一定の人が「非正社員として配置される社会」になってしまっている。
2010年には40%近くの人が非正社員になっている。
同一労働同一賃金ができていない日本
欧米では、働き手の職務を評価するときに①スキル、②責任、③負担度、④労働環境の4つのポイントで考える仕組み、ものさしが決まっている。
しかし、日本ではこうしたものさしが未整備なため、正社員と同じ労働なのに非正社員だと年収200万以下が6割ということが起こる。
非正規雇用が生まれた歴史
高度経済成長期に性別役割分業が定着し、オイルショックによって保育や介護の社会保障を削減し、女性が家庭内でこれを担う政策をすすめていった。
女性は結婚で退職するのが普通で、養われている女性の働き方としてパートが増えていった。
第三号被保険者制度もパートの賃金が抑え込まれる原因のひとつになった。
こうしてパートや派遣労働などの非正社員は、経済的に自立できないお小遣い稼ぎ程度や不安定な短期雇用でも構わないという常識が定着した。
こういった働き方が、経済的な自立が必要な人にも広がってしまった。
落とし穴を知っているひと、知らない人
今、職場で起きていることを話すと、暗い話ばかりで嫌になるという声が聞こえてくることが少なくない。
この世の中は、落とし穴があちこちにあるきれいな野原のようなものです。
野原を見渡しているだけだと、美しい花が咲き乱れ、何事もない平和な光景に見えます。
でも、何も知らずに歩き出すと、草花に隠れて見えなかった落とし穴に落ちてしまうことがあります。
ただ、落とし穴を知らずに突然落ちたときは悲惨です。
あるはずのない穴に落ちた自分を「愚か者」と責め、恥ずかしくて助けを求めることもできずに穴の中で死んでいくしかないかもしれません。
こうした事態を防ぎながら、元気に野原に出て行ってもらうには、なぜ落とし穴があるのか、その構造はどうなっているのか、…といったことを合わせて教えておいてあげることこが必要なのです。
穴に落ちずに楽しく歩き続ける人もいます。その場合は通りかかった穴から「助けて」という声が聞こえて来たとき、穴の存在を知らなければ「助けて」の意味がわからないのです。
キャリア教育と労働教育の両輪を
学校ではキャリア教育がさかん。
一方で、働き手としての権利やルールを学ぶ「労働教育」の普及が遅れています。
権利ばかり主張するモンスター社員はいらないと会社から言われることを恐れる学校が結構ある。
しかし、職を得るためのキャリア教育と、職を維持するための労働教育は、働き続けるための車の両輪ではないか。
自立とは?
日本では「自立」というと、「人に頼らないこと」と言われることが多い。
自立とは、「上手に助けを求めて危機から抜け出すこと」である。
誰にも助けを求めないのは、ただの孤立。
働き方についての考え方を引用を多くしていますが、実際に苦難の中人とつながり新しい働き方を見つけた若者や、労働基準監督署に申告をして待遇を改善させた例などが豊富に載っていてとても参考になります。
まとめ
野原の落とし穴のたとえ話は本当にその通りだと思いました。知っていなければ大変なことになりそうです。
これって、性教育も同じことだなぁと思ったのでした。授業でもこのたとえ、使えそう・・・。
職場の図書館に入れてもらえるよう働きかけてみます。
ではまた☆