まなびと!

自らが学び続ける教師でありたい。振り返りの記録です。

[書評]普通と障害のはざまで生きづらさを抱える子どもを理解「発達障害 境界に立つ若者たち」

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見た目には普通なんだけれど、学校やバイト先で出会って「あれ?」と思うような子ども達。

そんな子ども達が通うA学院での授業や、卒業したその後の生徒達の姿を描いたのがこの本です。

本業はアーティストとは思えないくらい文章がイキイキとしていて、生徒への愛が感じられ、読んでいてとっても楽しい本でした。

A学院は、高校に入れない子ども達のためのサポート校。

もともと「オール3以下の子でも、丁寧に教えれば伸びる」という信念の塾で、「どうやら、どんなに丁寧にじっくり教えてもできない子がいる」と感じ、そういう子ども達のために開校したのが始まり。

最盛期には数百人の生徒が通っていたが、少子化により普通と障害のはざまに居るいわゆる「境界児」も普通高校に入れるようになり、通信制で高校卒業資格が得られる学校も増え、A学院は08年には閉校になりました。

A学院の閉校までの道のりと、最盛期に通っていて、現在は30歳前後の5人の元生徒へのインタビューで構成されています。

読んでみて、正直「他人事じゃない」

少子化により、私立高校でもなかなか生徒が集まらない学校も増えてきました。

うちの学校も、いつかこんな風に閉校を迎えるのでは?と思うことも。。。

でも、少子化で生徒の学力がアップするわけでもなく、二極化していることもあり、境界児や低学力の生徒のための学校はより必要とされていくんだろうな。

A学院のいいところは、少人数でゆったり教えられる時期があったところ。

うちは人数が多くて、施設設備も人員もパンク気味です。困った。。。

内容は以下の通り。(平凡社WEBサイトより)

■概要
たとえば、100÷2は簡単にできても、120÷2は間違えてしまう。
漢字の書き取りでは、何かが抜けてしまったり、
漢字が読めなかったりする。空気が読めない──。

一見、ごく普通の子だから、こうしたことができないと、
周囲からは「なぜ、できないの?」
「なまけているんじゃないの」と思われてしまい、
学校や職場に居づらくなってしまう。
障害手帳をもらいたくない、
でも、みんなと同じようにはできない・・・。

こうした《境界児》と呼ばれる子ども(若者)たちがいる。
家庭から学校へ、学校から社会へと、彼らが歳を重ねるごとに、
彼らの居場所がどんどん少なくなっていくのが現状だ。

発達障害》という障害は、どのような障害なのだろうか?
そして、それを持つ子どもたちは、
どんな困難を抱えているのだろうか?
18年にわたって、発達障害教育の現場に立ち続けてきた著者が、
彼らにインタビューを試みた。
信頼できる先生だから話せた、今のこと、未来のこと。

■目次
第一部
「はざまの子」のためのもうひとつの学校
──A学院という学校があった
1. はじめの終わり、終わりのはじまり
2. 子どもたちとのはじめての出会い
3. A学院で実践されたこと
4. A学院をのみこんだ時代の波
5. 規模縮小、そして閉校へ
6. 卒業生たちの来訪

第二部
第一章 見かけはごく普通なんだけど
──「LD傾向」を持つタケシ君の場合
第二章 わたしKYなのかも
──「アスペルガー症候群」を抱えるアイコさんの場合
第三章 「普通」と「障害」のはざまで
──「軽度知的発達障害」を抱えるナオコさんの場合
第四章 どうしても普通免許が取れない]
──「学習遅進」を抱えるフクちゃんの場合
第五章 読解力がないんだよね、わたし・・・
──「ディスレクシア難読症)」をかかえるユキエさんの場合
第六章 障害をまるまる「個性」と受け止めて
──「軽度知的発達障害」を抱えるテツヤ君の場合

昔(いつだよ)なら、簡単な四則演算ができなくても、ちょっと空気が読めなくても「しょうがないなぁ」と受け止められるような雰囲気の仕事があったり、居場所があったかもしれないけれど、現在はそういう子は非正規の仕事を転々としたり、仕事にすら就けないこともある。

現在ノーマライゼーションは進んだように見えて、「普通」「障害」と一目で分かる人にはやさしいかも知れないが、「境界」はそうではない。どちらにも寄る辺がないという厳しさ。

そういう子には「なんでこんなこともできないの」とは言わないでほしい、と著者のあとがきより。

私、すでに長男に「なんでこんなこともできないの」攻撃を食らわせて早2年くらい?

大いに反省です。

実際に、勤務先にもこのインタビューに出てくれたような生徒がたーーーーくさん居ます。

今回、この記事をリライトして、続編が出ていることを初めて知る…読まないと!!

著者のブログはこちら。

jinruinekokakeikaku2.blogspot.jp

とにかく子どもの発達に関わる方、必読です!

ではまた!