[書評]若年層の貧困の連鎖が止まらない「ドキュメント高校中退」
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公立高校無償化前の本。
無償化になって、助かっている生徒やご家庭も多いのでしょうね。
私立学校はまだまだ似たような状況が続いているかもしれない。
主に埼玉の県立高校の事例を取り上げています。
教育格差が人生に多大な影響を及ぼすことがよく分かる本です。
著者は学校現場に20年ほどいらした方。
中退者へのインタビューを丁寧にまとめています。
なるほど!メモ
実際に高校を中退する生徒も身近にいますし、貧困を抱えている生徒もいる。
読んでいて辛くなる本でしたね…。
中退だと、まともな仕事につけない
中退者が口を揃えて言うことの一つ。
高校生の方が身分がしっかりしている。中退者でバイトにすらつけないことがある。
親が安全基地でないこと
「親に期待されていると思うか?」
という問いに対して、進学校と底辺校(新書の呼び名のまま)では全く逆の相関を示す。
底辺校の高校生は、親に期待されていないと感じている。
親が高校を出ていないケースも多い。
子どもの進路に無関心、金がかかるから早めに辞めてくれと言い放つことも。
制服を買うお金がないことも多いので、採寸の時に現金で支払ってもらう。
家庭でのDVがとにかく多く、家庭が子どもの安全基地になっていない。
進学校に比べ、持ち家率より借家率が上回る。支援金を受けている率も困難校の方が格段に高い。
高校生も遊ぶだけでもお金がかかる。お金がなければ友達も減っていき、孤立して行く。
学習障害、知的障害の生徒も
このルポでは、九九が出来ない、字が読めない生徒も出てくる。
高校の授業内容にはとても入れない。
発達障害の概念が普及してきたのはここ最近で、ケアされてない子どもたちが放置されてここまで来てしまっている。
中退率の計算方法に問題あり?
高校中退が問題にならないのはその中退率の低さ。
文科省の計算方法では毎年の退学者を学校全体の数で割るために1%台になっている。
しかし、退学者をその学年の入学者数で割ると8%にもなる。
また、転学者は退学者に含めないが、通信制高校を卒業する率はさらに低くなっており、転学者も含めたらさらに多くなると思われる。
高校の先生も苦しい
公立高校では底辺校を希望する人は少なく、異動したとしてもほんの数年で異動していくためにノウハウも積み上げられて行かない。
生徒をなるべく学校にとどめるために、生徒の事情を汲んでいくのか?
厳罰化してどんどんやる気がない生徒に退学してもらうか?
どちらかの選択肢しか残されておらず、厳罰化の方向に向かっている学校が多い。
上記のようなケースを読んでいて、私の周辺で見聞きすることとかなり近いので驚きました。
私立高校でも、
- ご飯が1日1食、見かねた教員がたまにお弁当を作っている
- カーディガンなど袖が破れてもそのまま着ている
- 入学時からの授業料未納
- 選択授業を選ぶ基準は費用がかからないかどうか
といった状況があります。
まとめ
怠けている。
努力が足りない。
と、生徒を非難することは簡単です。
生徒たちのような困難な境遇から教員になった人は少なく、生徒に共感出来ない人も多いかもしれません。
生徒の事情を理解できたとしても、クラスのほとんどが生活の土台がなく支援が必要な場合はすべての生徒にまで手が回りません。
教員だけでは受け止めきれないです。
そういった生徒が底辺校という場所に集められ、進学校を出たような生徒とは人生において二度と交わることがないことも子どもたちの孤立を深めているかもしれません。
高校中退をしても仕事が見つかる世の中であれば問題ないのでしょうが、貧困の連鎖の中に入ってしまっては仕事をして税金を納めるということが遠い夢になってしまいます。
高校入学よりももっとずっと前から子どもたちの生活の支援を行うことで、犯罪なども減ると思うのですがどうなんでしょうか。
私も、今の仕事場で生徒たちと出会う前は、今のような認識では全くなかったので人のこと言えませんが。。。
よかったら読んでみて下さい。
ではまた☆